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NO.067ISO45001 / 労働安全衛生

ISO 45001(労働安全衛生)と品質の関係とは?― 統合運用の設計と改訂動向

ISO 45001は労働安全衛生マネジメントシステムの国際規格です。ISO 9001・14001と共通の構造を持つため統合運用しやすい一方、「働く人の参加」という45001固有の要求があります。規格の構造、9001との重なりと違い、統合マネジメントシステムの設計、改訂動向、そして安全と品質が同じ土台を共有する理由を整理します。

公開QUALIKEEP 編集部
ISO45001労働安全衛生ISO9001マネジメントシステム統合運用

この記事の要点SUMMARY

  • ISO 45001はISO 9001・14001と共通の章立て(附属書SL構造)で書かれており、統合運用しやすい
  • 45001固有の要求は「働く人の協議及び参加」。管理者だけで決めた安全は要求を満たさない
  • 安全と品質は"守られなかったルール"という同じ弱点を共有する。記録の仕組みを分けずに設計すると負荷が減る

「ISO 9001は品質、ISO 14001は環境、ISO 45001は安全」——このように領域で切り分けて理解されることが多い3つの規格ですが、実務で運用してみると、この3つは同じ骨格でできており、同じ弱点でつまずくことが分かります。この記事では、ISO 45001の中身を整理したうえで、品質側の担当者から見て何が重なり、何が違うのかを見ていきます。

ISO 45001とは

ISO 45001は、労働安全衛生マネジメントシステム(OHSMS)の国際規格です。2018年に発行され、それまで広く使われていた OHSAS 18001 を置き換えました。目的は明快で、「働く人の負傷および健康障害を防止し、安全で健康的な職場を提供すること」です。

日本には従来から厚生労働省のOSHMS指針があり、こちらも同じ思想に立っています。ISO 45001はその国際版と考えると理解しやすいでしょう。労働時間や安全衛生の法令面は「取適法・労基法コンプライアンス」も関連します。

ISO 9001と同じ骨格でできている

ISOのマネジメントシステム規格は、共通の章立て(いわゆる附属書SL構造)で書かれています。だから3つを並べると、驚くほど同じ構成をしています。

箇条共通のテーマISO 9001での中身ISO 45001での中身
4組織及びその状況の理解品質に影響する内外の課題、利害関係者安全衛生に影響する課題、働く人・法令
5リーダーシップ品質方針、責任と権限安全衛生方針、働く人の協議及び参加
6計画品質目標、リスク及び機会危険源の特定、リスク評価、法的要求事項
7支援資源、力量、認識、文書化した情報同左(安全教育・資格が中心)
8運用製造・サービス提供の管理、外部提供者運用の管理、変更の管理緊急事態への準備
9パフォーマンス評価監視測定、内部監査、マネジメントレビュー同左(労働災害・ヒヤリハットの分析)
10改善不適合と是正処置、継続的改善インシデント、不適合と是正処置

この構造の一致は偶然ではなく、統合して運用できるように意図的に設計されています。したがって、すでにISO 9001を運用している組織がISO 45001を導入するとき、内部監査・文書管理・マネジメントレビュー・是正処置といった仕組みの大半は共用できます。

ISO 45001に固有のもの ―「働く人の協議及び参加」

共通構造の中で、ISO 45001が明確に踏み込んでいるのが箇条5.4の「働く人の協議及び参加」です。ISO 9001にはここまで明示的な要求はありません。

意味するところは、安全のルールを管理者だけで決めてはいけないということです。危険源の特定、リスク評価、是正処置の決定といった場面に、実際にその作業をしている人が関わる必要があります。しかも「意見を聞いた」で終わりではなく、参加を妨げている要因(時間がない、言い出しにくい、報復を恐れる等)の除去まで求められます。

品質側にも効く発想

「現場が参加していない仕組みは守られない」というのは、品質でもまったく同じです。現場を通さずに作った手順書が守られず、記録だけが後追いで埋められる——という現象は、多くの工場で起きています(「現場がDXを面倒がる本当の理由」)。ISO 45001の5.4は、その原理を規格の側から明文化したものと読めます。

安全と品質の「重なり」を具体的に見る

規格の構造が同じというだけでなく、現場で起きている失敗の中身も重なっています。同じ事象が、片方では安全問題、もう片方では品質問題として現れるだけ、というケースが少なくありません。

現場で起きること安全(45001)側の問題品質(9001)側の問題
薬品の容器に中身が書かれていない誤って混触し、有害ガスが発生する違う薬品を投入し、製品が不適合になる
期限切れ・劣化した資材を使う接着剤や樹脂の劣化で治具が破損する製品の強度・性能が規格外になる
作業手順の変更が周知されない未習熟な作業でけがをする工程能力が落ち、不良が出る
記録が後からまとめて書かれる実際の作業状況が分からず、災害原因が追えない監査で記録の信頼性を疑われる
資格・力量の確認が形だけ無資格作業による重大災害特殊工程の要員要求を満たさない
ヒヤリハット/軽微な不具合が報告されない重大災害の予兆を逃すクレームになるまで問題が表面化しない

つまり両者は、「決めたことが現場で守られているか」「守られたことを示せるか」という同じ土俵の上にいます。仕組みを分けて二重に作ると、現場の記入負荷が倍になり、どちらも形骸化する——という失敗が起きやすいのはこのためです。

変更管理 ― 安全と品質が同時に壊れる場所

重なりのなかでも、とくに両方を一度に壊しうるのが変更です。ISO 45001は箇条8.1.3で変更の管理を求め、ISO 9001も6.3および8.5.6で変更の管理を求めています。別々の箇条ですが、現場で起きていることは一つです。

現場で起きた変更品質側で起こりうること安全側で起こりうること
原材料の供給元・銘柄を変えた特性が変わり、製品が規格から外れる成分が変わり、混触や発熱の危険が生じる
洗浄剤を代替品に切り替えた残留物が製品に影響する皮膚障害・有毒ガス発生の恐れ
工程の順序を現場判断で入れ替えた想定した工程能力が出ない想定していない挟まれ・巻き込まれが起きる
設備を移設・改造した加工条件が変わり不良が出る可動範囲・排気・動線が変わり危険源が増える
増産のため人員を急遽入れ替えた未習熟による不良未習熟による災害

よくある失敗は、片方だけを評価して通してしまうことです。品質部門が「特性は同等」と判断して材料変更を承認したが、安全面の評価は誰もしていなかった。あるいは安全部門が「より安全な薬剤だ」と判断して切り替えたが、製品への影響は検討されていなかった——どちらも実際に起きます。

変更の提案(材料・工程・設備・要員)

誰が何を変えたいのかを明示する

影響評価を両面で行う

品質への影響と、安全衛生への影響を同じ手続きの中で見る

承認と周知

誰が承認し、現場にどう伝えたかを残す

実施後の確認

想定どおりか。ずれていれば戻す判断も含める

変更の入口を一本にすると、片方だけ通り抜ける事故が減る

統合運用の実利がはっきり出るのがここです。変更管理の様式と手続きを一本化しておけば、評価欄に安全と品質の両方があるというだけで、片方の見落としがかなり減ります。

化学物質 ― 期限切れが「品質」ではなく「災害」になる

期限切れの資材というと品質の問題に聞こえますが、化学物質ではそのまま労働災害の要因になります。時間とともに性状が変わるためです。

起きる変化安全上のリスク管理したい情報
過酸化物系の分解が進む発熱・発火製造日、保管温度、使用期限
溶剤が揮発し組成が変わる想定外の反応、引火性の変化開封日、開封後の使用期限
容器の腐食・劣化漏えい、破損時の飛散受入日、保管状態
ガス系の充填圧・容器期限破裂、噴出容器の検査期限、残圧
ラベルが判読不能になる取り違えによる混触現物と記録の紐づけ

国内では近年、化学物質の管理が「特定の物質を国が指定して規制する」方式から、事業者が自らリスクアセスメントを行って管理する方向へ大きく舵を切りました。対象となる物質の範囲が広がり、多くの現場で「これまで対象外だった薬品も評価が要る」状態になっています。

このとき土台になるのが、現場に今どの薬品があり、いつ開封され、期限内かが分かることです。SDS(安全データシート)を整備していても、現物の管理が手書きラベル頼りだと、リスクアセスメントの前提が崩れます。ISO 45001でいえば危険源の特定(6.1.2)と法的要求事項(6.1.3)に直結する部分です。

SDSは「情報」、現物管理は「実態」

SDSが揃っていることと、現場の実態が管理されていることは別の話です。審査でも法令対応でも、最終的に問われるのは「実際に使われた薬品が、適切な状態のものだったか」です。書類の整備だけでは埋まりません。

二重記入が招くもの ― 報告されない小さな異常

安全と品質を別々の仕組みで運用すると、現場には帳票が2セット降ってきます。安全用のチェックシートと、品質用の作業日報。どちらも「必ず記入してください」と言われます。

現場の時間は増えません。結果として起きるのは、記入の省略と、終業前のまとめ書きです。そしてまとめ書きが常態化すると、失われるものがあります——その時々に気づいた小さな異常です。

帳票が増える

安全用・品質用・工程用。現場の作業時間は変わらない

まとめ書きが常態化

終業前に思い出しながら記入する

小さな異常が書かれなくなる

「たいしたことないから」で省略される。ヒヤリハットも軽微な不具合も同じ

予兆を拾えないまま大きな事象へ

労働災害も、品質クレームも、前触れは同じように消えている

記入負荷が増えるほど、拾えるはずの予兆が消えていく

労働安全の分野には、重大災害の背後には多数の軽微な事故と、さらに膨大な数のヒヤリハットが存在するという経験則があります。品質でも構図は同じで、クレームの背後には社内で握りつぶされた小さな異常が並んでいます。どちらも、報告される仕組みがなければ見えません

ここから導かれる設計方針は、「もっと書かせる」ではなく「書く量を減らして、報告に回せる余力を残す」です。安全と品質で重複している記入をひとつにまとめられないか——統合運用を検討するとき、最初に見るべきはここだと考えています(「現場がDXを面倒がる本当の理由」)。

統合マネジメントシステム(IMS)の設計

9001・14001・45001を別々に運用すると、内部監査が年3回、マネジメントレビューが3種類、文書体系が3セット……と、管理部門が消耗します。統合運用の基本形は次のとおりです。

共通化する(管理の仕組み)

文書管理・記録管理・内部監査・マネジメントレビュー・是正処置・力量管理

分けたままにする(専門の中身)

危険源の特定とリスク評価(45001)/HACCP・工程管理(品質)/環境側面(14001)

記録は一元化を狙う

現場の1つの操作から、安全にも品質にも使える記録が残る形にする

共通化できる部分と、分けたままにする部分を切り分ける
要素統合の可否設計のポイント
方針統合可(一本化も可能)「品質・環境・安全衛生方針」として1枚にまとめる組織が多い
内部監査統合可1回の監査で3規格を見る。監査員の力量計画は分けて考える
マネジメントレビュー統合可インプット項目は規格ごとに漏れなく含める
是正処置統合可同じ様式・同じフローで運用。分類だけ分ける
リスク評価部分的9001の「リスク及び機会」と45001の「危険源」は目的が違う。表は分ける方が実務的
力量・教育統合可資格台帳を一本化し、有効期限を共通管理
文書・記録統合可同じ管理ルール。ただし保存期間は要求の厳しい方に合わせる

改訂動向

ISO 45001についても改訂の作業が進んでおり、2026年に次期版が発行される見込みとされています。伝えられている方向性は、大幅な要求追加ではなく、共通構造の最新様式への整合、表現の明確化、附属書(手引き)の充実といったものです。

同時期に、ISO 9001も2026年内の発行が見込まれています。統合運用している組織にとっては、両方の移行を同じタイミングで計画できるという点で、むしろ都合が良い面があります(ISO 9001側は「ISO 9001の改訂(2026年版)で何が変わる?」)。

発行時期は必ず最新情報で確認を

規格の発行時期や移行期限は、審議の状況によって変わります。日本規格協会(JSA)の情報および契約している認証機関のアナウンスで、自社の移行期限を確定させてください。

よくある誤解

  • 「ISO 45001を取れば労災が減る」:規格は仕組みの枠組みであり、それ自体が災害を防ぐわけではありません。運用の中身次第です
  • 「安全は安全衛生委員会の仕事、品質はQAの仕事」:現場で起きる事象は重なります。記録の仕組みを分断すると両方が形骸化します
  • 「働く人の参加=アンケートを取ること」:意思決定への関与と、参加を妨げる要因の除去まで求められます
  • 「統合すると審査が甘くなる」:見る範囲は変わりません。重複作業が減るだけです
  • 「45001は建設業や重工業のもの」:食品・化学・電子部品でも、薬品・熱・可動部・重量物のリスクは常に存在します

まとめ

  • ISO 45001は労働安全衛生のマネジメントシステム規格。ISO 9001・14001と共通の章立てで書かれている
  • 固有性が強いのは「働く人の協議及び参加」。管理者だけで決めた安全は要求を満たさない
  • 安全と品質は「決めたことが守られたか、示せるか」という同じ土俵を共有している
  • 変更管理は両方を同時に壊しうる場所。材料・工程・設備の変更を片面だけ評価して通す失敗が多い
  • 化学物質の期限切れは品質問題ではなく災害要因になる。近年は事業者自身のリスクアセスメントが軸になっている
  • 安全用と品質用で帳票を二重に書かせると、まとめ書きが常態化し、ヒヤリハットや小さな異常が報告されなくなる
  • 統合運用では、管理の仕組み(監査・文書・是正)は共通化し、リスク評価など専門の中身は分けるのが実務的
  • ISO 45001・ISO 9001ともに2026年の発行が見込まれ、移行を同時に計画できる可能性がある

この分野を扱うなら ― QUALIKEEP でできること

正直にお伝えすると、QUALIKEEP は労働安全衛生の管理システムではありません。危険源の評価表やヒヤリハット報告、健康診断の管理といった45001の中核業務を担う機能は持っていません。QUALIKEEP が関われるのは、安全と品質が重なる「モノの識別と期限」の部分です。薬品や資材の受入・開封・期限・ロットをQRスキャンでサーバー同期時刻とともに記録し、期限切れや取り違えにつながる状態はスキャン時に警告(設定によりブロック)します。現場の操作はスキャンだけで、記入項目を増やしません。

安全衛生の話題なので、範囲を明確にしておきます。法令適合を判定する道具ではありません

領域QUALIKEEP が担える範囲対象外(他の仕組みで扱う領域)
薬品・資材の現物管理受入・開封・期限・ロットの記録、取り違えと期限切れのスキャン判定——
SDS・法規制(該当なし)SDSの管理・自動連携や、労働安全衛生法・毒劇物取締法等への適合判定は行いません。法令の該当性判断は専門家・既存システムの領域
危険源の特定(6.1.2)「現場に何がどの状態であるか」という事実の記録を提供リスクアセスメントの実施と評価そのもの
インシデント管理(箇条10)(該当なし)ヒヤリハット報告、災害調査、是正処置の運用
変更管理(8.1.3)材料・ロットが変わった事実の記録変更の影響評価と承認の手続き
要員・健康管理(該当なし)資格管理、健康診断、作業環境測定

つまり、安全のためのチェックと品質のためのチェックが同じ現物を見ている場面で、現場に二重に書かせずに済ませたい——という限られた用途での選択肢です。統合マネジメントシステムそのものを置き換えるものではありません。

安全と品質、二重の記入を現場に強いていませんか。

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ご注意

本記事は公開情報をもとにした一般的な解説です。規格の要求事項・改訂時期・移行期限は変更されることがあります。また労働安全衛生に関する具体的な法令対応は、所轄の労働基準監督署や専門家の助言をご確認ください。

参考・出典

  1. 一般財団法人日本規格協会(JSA)「ISO 45001 概要」
  2. 厚生労働省「労働安全衛生マネジメントシステム(OSHMS)に関する指針」

※ 外部サイトの内容・URL は変更される場合があります。最新の情報は各機関の公式ページをご確認ください。

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