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NO.066ISO9001 / 規格改訂

ISO 9001の改訂(2026年版)で何が変わる?― スケジュール・変更点・移行の進め方

ISO 9001は2015年版から約10年ぶりの改訂作業が進み、2026年内の発行が見込まれています。DIS・FDISを経た改訂スケジュール、先行して追加された「気候変動の考慮」(2024年の修正)、今回の改訂で"変わること・変わらないこと"、移行期間中に認証組織がやるべきこと、現場の記録に与える影響までを、公的機関の公開情報をもとに整理します。

公開QUALIKEEP 編集部
ISO9001規格改訂品質保証審査QMS

この記事の要点SUMMARY

  • ISO 9001は2015年版以来の改訂中。DIS(2025年8月)→FDIS(2026年)を経て、2026年内の発行が見込まれている
  • 要求事項が全面的に入れ替わる改訂ではなく、構造の整合・表現の明確化・気候変動の考慮などが中心とされる
  • 移行は通例3年程度の期間が設けられる。慌てて作り直すより、まず自社の記録が"証拠として示せる状態か"を点検するのが実利的

ISO 9001 は2015年版の発行から約10年が経ち、現在、次期版への改訂作業が進んでいます。「また規格が変わるのか」「うちのマニュアルは全部作り直しか」——認証を維持している組織にとっては気が重い話題ですが、公開されている情報を追う限り、今回は"別物に作り替える"改訂ではありません。この記事では、改訂のスケジュール、何が変わって何が変わらないのか、そして移行期間に本当にやるべきことを整理します(規格そのものの基本は「ISO9001とは」)。

改訂スケジュール ― どこまで進んでいるか

ISOの規格改訂は、決まった段階を踏んで進みます。現在の位置を把握しておくと、社内への説明もしやすくなります。

段階意味ISO 9001改訂での状況
WD/CD作業原案・委員会原案。まだ中身が動く完了済み
DIS(国際規格案)各国が投票し、コメントを出す段階。ここでほぼ骨格が固まる2025年8月に発行され、同年11月に投票締切。その後コメント対応が行われた
FDIS(最終国際規格案)最終確認の投票。原則、技術的な内容はここで確定2026年に発行段階へ
IS(発行)正式な国際規格として発行2026年内の発行が見込まれている
移行期間旧版の認証が有効な期間。この間に移行審査を受ける発行後、通例3年程度が設定される見込み

日付は動きうる前提で

ISOの改訂スケジュールは、コメント対応の状況によって前後することがあります。発行月や移行期限は、日本規格協会(JSA)や自社の認証機関が出す最新のアナウンスで必ず確認してください。本記事は「おおよその流れを掴む」ための整理です。

先に来ていた変更 ―「気候変動の考慮」

見落とされがちですが、改訂の一部はすでに適用されています。2024年、ISOはマネジメントシステム規格に共通する修正(Amendment)を出し、ISO 9001でも箇条4.1(組織及びその状況の理解)と4.2(利害関係者のニーズ及び期待の理解)に、気候変動が関連するかどうかを考慮するという趣旨が追加されました。

これは「CO2を削減せよ」という要求ではありません。"自社の品質マネジメントにとって気候変動が関係するかを検討し、その検討をしたことが分かるようにしておく"という位置づけです。関係すると判断すればリスク・機会として扱い、関係が薄いと判断したならその判断でも構いません。すでに審査で確認される項目になっているため、まだ検討記録がない組織は、次回審査までに整理しておくのが無難です(環境側の要求全体は「GXはなぜ今必須なのか」も参考に)。

「品質側で説明できる気候変動」という考え方

この箇条への対応で悩む組織は多いのですが、わざわざ新しい取り組みを立ち上げる必要はありません。品質マネジメントの中にすでにある活動のうち、資源やエネルギーの使われ方に効いているものを整理するだけでも、検討の跡は残せます。

たとえば不適合の削減です。箇条8.7で管理している不適合品——誤投入による作り直し、期限切れによる原材料の廃棄、条件外れによるロット廃棄——は、そのまま投入した材料とエネルギーが製品にならずに捨てられた量でもあります。品質改善として取り組んでいることが、資源のむだの削減としても説明できる、という関係です。

品質側の活動同じ活動の資源・環境側の意味使える記録
期限切れ材料の使用防止廃棄される原材料そのものの削減受入・開封・期限の記録、廃棄量
先入れ先出しの徹底滞留による期限切れ廃棄の抑制在庫の使用順の記録
誤投入の防止作り直しに要する材料・エネルギーの削減投入時の照合記録、不適合の発生件数
歩留まりの改善同じ産出量に対する投入量の低減投入量と産出量の実績

ただし、こじつけにはしないこと

「不適合が減った=気候変動対応をしている」と短絡すると、審査で説明が破綻します。求められているのは"気候変動が自社に関係するかを考慮したこと"であり、その結果として何を課題と捉え、どう扱うかを決めた筋道です。既存の品質活動はその材料として使える、という位置づけで整理してください。

今回の改訂で「変わること」と「変わらないこと」

公開情報から見える方向性は、「別物に変える」のではなく「時代に合わせて磨く」改訂です。全体像を整理すると次のようになります。

観点見込まれる方向性
規格の骨格(箇条4〜10)大枠は維持される見込み。全面的な構造変更は想定されていない
要求事項の量大幅な追加・削除は予定されていないとされる
表現・用語ISOのマネジメントシステム規格共通の最新様式に合わせ、言い回しが整理・明確化される
気候変動2024年の修正で追加済みの内容が織り込まれる
付属書・手引き理解を助ける注記やガイダンスが充実する方向
認証の枠組み認証・審査の仕組みそのものが変わるわけではない

つまり、「マニュアルを一から書き直す」たぐいの改訂ではないと考えてよさそうです。とはいえ、移行審査は必ず来ます。問題は"何を準備するか"です。

移行で本当に大変なのは「文書」ではなく「証拠」

規格改訂というと、多くの組織はまず品質マニュアルや規定文書の改版に着手します。もちろん必要ですが、移行審査で時間を取られるのは文書の体裁ではなく、「決めたとおりに運用した証拠を出せるか」です。ここは2015年版でも2026年版でも変わりません。

審査で繰り返し問われるのは、たとえば次のような点です。いずれも文書ではなく現場の記録の話です。

審査で問われること関係する箇条(2015年版)典型的な弱点
決めた手順どおりに製造・提供したと示せるか8.5.1(製造・サービス提供の管理)手順書はあるが、実施記録が手書きで抜けがある
材料やロットを識別・追跡できるか8.5.2(識別及びトレーサビリティ)受入と出荷はあるが、現場で"どのロットを使ったか"が空白
不適合品を隔離・処置し、記録したか8.7(不適合なアウトプットの管理)廃棄はしたが、識別・処置の記録が残っていない
記録が信頼できる形で保持されているか7.5(文書化した情報)後から書き換えられるExcel。誰が入力したか不明

最後の7.5は近年とくに厳しく見られます。「電子化しているから大丈夫」ではなく、後から書き換えられない(書き換えたら分かる)形かが問われます(詳しくは「監査で追加チェックが増える理由」「ALCOA+とは」)。

なぜ「手書き」と「手入力Excel」が7.5で不利になるのか

ここは「審査官の心証が悪い」といった感覚の話ではなく、記録が満たすべき性質を分解すると理由がはっきりします。医薬分野で整理されたALCOA+の考え方が、いまは製造業全般の記録の見方として使われています。

求められる性質意味手書き台帳での弱点共有Excelでの弱点
帰属性(誰が)記録を作った人が特定できる代筆・後からのサインが起きやすい共有アカウント・共有PCだと個人が特定できない
同時性(いつ)作業したその時に記録されている終業前にまとめて書かれることがある入力時刻が残らない/PCの時計を変えられる
原本性(元の記録か)転記ではなく一次記録である現場メモから清書=転記になっている紙から転記していれば同じ問題が残る
正確性・完全性(変えられていないか)変更が記録として残る修正液・書き直しで元の値が消える上書き保存で前の値も履歴も消える

注意したいのは、これらが「紙かデジタルか」の対立ではないということです。紙をやめてExcelや簡易フォームに移しただけでは、帰属性と同時性と完全性は改善されず、むしろ筆跡という手がかりが失われる分、後から作られた記録かどうかの判別がつきにくくなることすらあります。「ペーパーレス化したのに記録の信頼性は下がった」という、いわば逆行が起きている状態です。

紙の台帳

後追い記入・代筆・修正液。ただし筆跡や筆圧という手がかりは残る

手入力のExcelへ移行

共有アカウント/入力時刻なし/上書きで履歴が消える。手がかりも消える

作業と同時に自動で残る記録

誰が・いつが自動で付き、後から変えれば分かる。ここで初めて性質が満たされる

電子化そのものは、記録の信頼性を上げも下げもしない

8.7・10.2 ―「再教育」「ダブルチェック」が通りにくくなっている

もう一つ、移行審査の前に見直しておきたいのが是正処置の中身です。不適合が出たとき、再発防止策として「作業者へ再教育を実施」「ダブルチェックを追加」と書いて提出する——これは長く使われてきた書き方ですが、近年は「それで再発が防げる根拠は何か」と追及されることが増えています。

理由は単純で、どちらも人の注意力に頼る対策だからです。教育は時間とともに薄れ、ダブルチェックは忙しくなると形だけになります。実際、同じ不適合が数年おきに再発し、そのたびに同じ是正処置が提出されている——という履歴は、審査で必ず目に留まります。

対策の型効き方審査での受け止められ方
注意喚起朝礼で周知、掲示物を貼る一時的。効果が測れない単独では根本対策と見なされにくい
教育・訓練再教育、力量評価のやり直し必要だが、忘却と異動で薄れる必要条件。ただしこれだけでは弱い
二重確認ダブルチェック、指差呼称負荷が増え、形骸化しやすい「なぜ一人目が見落としたか」を問われる
手順・帳票の改善チェック項目の並べ替え、判断を減らす中程度。運用に依存する妥当と受け止められやすい
仕組みで防ぐ間違った組み合わせでは次に進めない、期限切れは警告が出る人の状態に左右されにくい根本対策として説明しやすい

「仕組みで防ぐ」は、必ずしも大がかりな設備投資を意味しません。現場で判断させている事柄を減らす方向の工夫はすべてここに含まれます。たとえば「作業者が期限を暗算する」のをやめて、期限の判定そのものを別の手段に移す、といった変更です(考え方は「デジタルポカヨケ」「性善説に頼らない設計」)。

「後から探す」トレーサビリティの限界

8.5.2(識別及びトレーサビリティ)についても、審査で見られる水準が上がっています。分かりやすいのは、追跡が「事後の調査」なのか「その場の照合」なのかという違いです。

事後に追う型その場で照合する型
記録の作られ方作業後に日報へ記入し、後で集約する作業のその時点で照合し、結果が残る
問題発覚時バインダーやファイルを遡って突き合わせる記録から直接ロットを引ける
所要時間数時間〜数日かかることがある短時間で範囲を絞れる
誤りの検出事後にしか分からない(すでに製品はできている)照合の時点で気づける
記録の性質転記が挟まる一次記録として残る

規格が「その場で照合せよ」と明文で要求しているわけではありません。ただ、回収が必要になったときに範囲を特定できるかという実効性の観点で見ると、前者は苦しくなります。とくに顧客監査では「実際にやってみせてください」と言われることがあり、そこで詰まると印象は大きく変わります(「トレーサビリティとは」「リコールと影響範囲の特定」)。

移行の進め方 ― 4ステップ

① 最新情報の確認(発行時期・移行期限)

認証機関のアナウンスと日本規格協会の情報で、自社の期限を確定させる

② 差分の洗い出し(新旧対照)

発行後に出る新旧対照表で、自社の文書に影響する箇所だけ特定する

③ 文書の改版と教育

影響箇所のみ改版。全面書き直しは通常不要

④ 記録の点検(ここが本丸)

手順どおり運用した証拠を、審査で即座に出せる状態にしておく

規格の差分対応と、記録の足腰づくりを並行させる

②③は規格が発行されてからでないと精度が出ませんが、④は今日から着手できます。むしろ、改訂発行を待つ間にここを固めておくと、移行審査そのものが楽になります。

よくある誤解

  • 「改訂されたら認証が無効になる」:移行期間中は旧版の認証が有効です。期間内に移行審査を受ければ問題ありません
  • 「マニュアルを全部作り直す必要がある」:今回は大幅な要求追加は予定されていないとされます。影響箇所の改版で足りるのが通常です
  • 「気候変動対応=CO2削減の義務化」:求められているのは"関係するかを考慮すること"であり、削減目標の設定を直接求めるものではありません
  • 「発行までは何もできない」:記録の信頼性(7.5・8.5.2・8.7)は版に関係なく問われます。先に固めるほど移行は楽になります
  • 「紙をExcelにしたので7.5は対応済み」:帰属性・同時性・完全性が改善されていなければ、状況はほとんど変わりません。むしろ判別の手がかりが減ることもあります
  • 「再教育とダブルチェックを書いておけば是正処置は通る」:同じ不適合の再発履歴があると、人の注意に頼らない対策を求められます

まとめ

  • ISO 9001はDIS・FDISを経て、2026年内の発行が見込まれている
  • 骨格や要求量の大幅変更はなく、表現の明確化と共通様式への整合が中心とされる
  • 気候変動の考慮は2024年の修正で先行して追加済み。検討記録の整理が必要
  • 移行期間は通例3年程度。旧版の認証は期間中有効
  • 本当に時間がかかるのは文書改版より「運用した証拠を出せるか」。ここは今日から着手できる

この分野を扱うなら ― QUALIKEEP でできること

ここまではISO 9001の改訂そのものを解説してきました。正直にお伝えすると、QUALIKEEP は認証取得や移行を代行・保証するものではなく、品質マニュアルや規定文書を作る道具でもありません(そこは組織側の取り組みと、必要に応じてコンサルタントの領域です)。QUALIKEEP が担えるのは、移行審査で本丸になる「原材料まわりの客観的な記録」です。受入・開封・期限・ロットをQRスキャンでサーバー同期時刻とともに自動記録し、先入れ先出しの逸脱や期限切れはスキャン時に警告(設定によりブロック)、記録は改ざん検知付きで残り、ロットや日付から短時間で取り出せます。

ここまで箇条番号を挙げてきたので、念のため範囲をはっきりさせておきます。QMS全体を代替するものではありません。下表の「対象外」に挙げた領域は、既存の仕組みや上位システムで扱う前提です。

領域QUALIKEEP が担える範囲対象外(他の仕組みで扱う領域)
7.5 文書化した情報受入・開封・使用・廃棄の記録を、改ざん検知付きで保持・出力品質マニュアル、規定・手順書の文書管理
8.5.1 製造の管理材料の取り違え・期限切れをスキャン時に警告/ブロック設備の工程条件(温度・圧力等)の収集、工程能力の管理
8.5.2 トレーサビリティ材料ロットと使用実績の結びつけ、日付・ロットからの検索製品シリアル単位の組立履歴、BOM・設計構成の管理
8.7 不適合の管理廃棄・不使用の操作記録と数量不適合の是正処置プロセス、原因分析の運用
その他の箇条(該当なし)内部監査、マネジメントレビュー、力量管理、リスク及び機会 ほか

つまり、「移行審査で記録が出せずに困る箇所」を部分的に埋める道具です。8.5.1・8.5.2・8.7・7.5で問われる証跡のうち、原材料まわりを手書きから仕組みに変えたい場合の選択肢になります。

規格改訂を待つ間に、審査で本当に問われる「記録」を固めませんか。

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ご注意

本記事は公開情報をもとに一般的な流れを整理したものです。改訂版の正式な発行時期・要求事項の内容・移行期限は変更されることがあります。必ず日本規格協会(JSA)等の公式情報および契約している認証機関のアナウンスをご確認ください。

参考・出典

  1. 一般財団法人日本規格協会(JSA)「ISO 9001改訂動向」
  2. 日本産業標準調査会(JISC)「品質マネジメントシステム(QMS)」

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