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NO.097品質保証 / 品質コスト

品質コスト(COQ)とは?― 1:10:100の法則と、その扱い方

品質コストは、予防・評価・失敗(内部/外部)の4つに分けて捉えます。「工程内で直せば1、出荷後なら100」という1:10:100の経験則が何を言おうとしているのか、その数字をそのまま使ってよいのか、そして自社で品質コストを見るときの実務的な作り方を整理します。

公開QUALIKEEP 編集部
品質保証品質コストCOQコスト

この記事の要点SUMMARY

  • 品質コストは予防コスト・評価コスト・内部失敗コスト・外部失敗コストの4つに分けて捉える
  • 1:10:100は「発見が遅れるほど費用が跳ね上がる」ことを示す経験則。厳密な実証値ではない
  • 実務で価値があるのは総額の把握より、4つの比率がどう動いたかを追うこと

「品質にかける費用」と聞くと、検査員の人件費や試験の費用を思い浮かべるかもしれません。しかし品質コスト(COQ:Cost of Quality)の考え方では、それは一部にすぎません。不良を出したことによる損失まで含めて、はじめて全体が見えます。この記事では、その分け方と、有名な「1:10:100」の扱い方を整理します。

4つに分ける

品質コストは、大きく適合コスト(良いものを作るためにかける費用)と不適合コスト(悪いものを作ってしまった損失)に分かれ、それぞれ2つに細分されます。

分類中身性格
予防コスト不良を起こさないためにかける費用教育、設備の改善、工程設計、手順書の整備、供給者の選定先行投資
評価コスト良否を確かめるための費用検査、試験、測定器の校正、監査確認のための費用
内部失敗コスト社内で見つけた不良の損失手直し、廃棄、再検査、ライン停止、原因調査社内で収まる損失
外部失敗コスト社外に出てしまった不良の損失クレーム対応、返品、回収、賠償、信用の毀損もっとも高い

**予防コスト**

意図してかける。金額をコントロールできる

**評価コスト**

同じく意図してかける

**内部失敗コスト**

**起きてしまう**。社内で止められた分

**外部失敗コスト**

**起きてしまう**。しかも外に出た。金額が読めない

上2つは自分で決めてかける費用、下2つは起きてしまう損失

「検査を増やす」は予防ではありません

よくある誤解ですが、検査の強化は評価コストの増加であって予防ではありません。検査を増やしても不良の発生自体は減らないため、内部失敗コストは減りません(見つかる分だけ増えることもあります)。予防コストとは、そもそも不良が起きない工程にするための費用です。

1:10:100の法則

費用1工程内で見つける材料と、そこまでの加工の手間だけ費用10出荷前に見つける完成品の分解・選別・再検査・梱包やり直し費用100顧客のところで回収・代替品・報告・対応の人件費・信用発見が遅れるほどなぜ増えるのか段階が進むほど付加された価値と関わった人が増えるためこの比率は経験則。実証された値ではない
図 発見が遅れるほど処理費用が桁で増える。ただしこの比率は経験則であり、実証された確定値ではない

品質の分野で広く語られるのが 1:10:100 という比率です。不良を見つける段階が遅れるほど、処理にかかる費用が桁で増えるという考え方を表しています。

見つけた段階相対的な費用実際に何をすることになるか
工程内で見つける1その場で直す、または捨てる。材料と手間だけ
出荷前に見つける10完成品を分解・選別・再検査。梱包のやり直し。出荷を止める調整
顧客のところで見つかる100回収、代替品の手配、原因報告、対応の人件費、信用の低下

なぜ跳ね上がるのかは、費用の中身を見れば分かります。段階が進むほど、付加された価値と、関わった人の数が増えるからです。

工程内

材料と、そこまでの加工の手間だけ

完成後

**全工程の加工費、部品、包装、検査の手間すべてが無駄になる**

出荷後

**そこに物流費、相手の手間、対応の人件費、信用が加算される**

後の工程で見つかるほど、捨てるものが増える

この数字をそのまま使ってよいか

率直に言えば、1:10:100という数字を鵜呑みにするのは避けたほうがよいです。理由を整理します。

論点実際のところ
出典明確な大規模実証というより、経験則として広まった比率
実際の倍率業種・製品によって大きく違う。1:5:50の場合も、1:100:10000の場合もありうる
単位製品あたりか総額か定義が曖昧なまま使われることが多い
使いどころ桁の感覚を共有するための道具。精緻な計算には向かない
それでも有用な点「早く見つけるほど安い」という方向性は確か

経験則としての価値はある

数字の厳密さを問うと弱いのですが、この法則が伝えたいことは正しく、しかも直感に反しません。「工程内で1個捨てるのと、出荷後に1個回収するのは、費用がまるで違う」——これを桁の感覚として共有できることに価値があります。社内で予防への投資を説明するとき、この比率は有効な言葉になります。

比率の推移を見る

品質コストを実務で使うとき、総額よりも4つの比率に意味があります。改善が進んでいる組織では、比率が特定の方向に動きます。

状態予防評価内部失敗外部失敗読み取れること
改善前低い高い高い高い検査で支えている。不良は減っていない
改善の途中上がる高いまだ高い下がる予防に投資し始めた段階
改善後適度下げられる低い低い工程で作り込めている。検査を減らせる

注目すべきは「改善後」で評価コストが下がるという点です。工程で品質が作り込めていれば、検査の頻度を落とせます。逆に「検査を減らせない」状態は、工程が信頼できていないことの表れです。

予防コストを増やす

工程改善、教育、仕組み化。**すぐには効果が見えない**

**内部失敗コストが下がる**

手直し・廃棄が減る。ここで初めて効果が見える

**外部失敗コストが下がる**

クレームが減る。**もっとも遅れて現れるが、金額は最大**

評価コストを下げられる

工程が安定したので、検査を減らせる

予防に投資すると、時間差で失敗コストが下がる

この時間差が、予防への投資が続きにくい理由です。投資した期間は総額が増えて見えます。効果が出るまでに、経営の理解が必要になります。

自社で見るときの作り方

品質コストの集計は、精緻にやろうとすると挫折します。まず粗く始めるのが実務的です。

項目取りやすいデータ注意
内部失敗廃棄した数量と金額、手直しの工数まずここから。もっとも集めやすい
外部失敗クレーム対応の件数と工数、返品額対応にかかった時間を記録していないことが多い
評価検査員の人件費、外部試験費、校正費比較的取りやすい
予防教育費、改善活動の工数、設備投資の一部線引きが難しい。厳密さより継続を優先

完璧な集計より、同じ物差しで続けること

品質コストの集計では、「どこまでを含めるか」で必ず議論になります。ここに時間をかけるより、まず自社の定義を決めて、同じ物差しで毎月測り続けるほうが役に立ちます。比較したいのは他社ではなく、去年の自社です。

「隠れた失敗コスト」

見えている費用見えていない費用集計に乗りにくいが確実に発生している請求書が来るので把握できる廃棄した材料費手直しの工数返品の送料再検査の費用数字にならないので議論に上がらない原因調査に費やした時間手直しで止まった他の作業謝罪に回った時間と交通費「念のため」で恒久化した検査失った受注・値下げ要求現場の士気の低下・離職集計されている集計されていない
図 請求書が来る費用は水面上の一部。調査時間・止まった他の作業・恒久化した検査・失った受注は集計に乗りにくい

集計に乗りにくいけれど確実に発生しているものがあります。氷山の水面下にあたる部分です。

見えている費用**見えていない費用**
廃棄した材料費その調査に費やした時間
手直しの工数手直しのために止まった他の作業
返品の送料謝罪に行った営業の時間と交通費
再検査の費用「念のため」で恒久化した過剰な検査
クレーム対応費失った受注、値下げ要求、取引条件の悪化
——現場の士気の低下、離職

右列の4行目は特に厄介です。一度トラブルが起きると「念のため」の検査が追加され、それが恒久化します。これは評価コストとして永久に積み上がり続けますが、誰も「元の問題は解決したから戻そう」と言い出しません。

よくある誤解

  • 「品質コスト=検査費用」:予防・評価・内部失敗・外部失敗の4つです。失敗の損失も含みます
  • 「1:10:100は実証された数字」:経験則です。桁の感覚を共有する道具として使います
  • 「検査を強化すれば品質コストが下がる」:評価コストが増えるだけで、不良の発生は減りません
  • 「品質コストを下げる=品質にお金をかけない」:予防に投資して失敗を減らす、が正しい方向です
  • 「総額を正確に出さないと意味がない」:比率の推移を同じ物差しで追うほうが実務的です

まとめ

  • 品質コストは予防・評価・内部失敗・外部失敗の4つに分ける
  • 検査の強化は評価コストの増加であって、予防ではない
  • 1:10:100は経験則。厳密な実証値ではないが、「早く見つけるほど安い」という方向性は確か
  • 改善が進むと予防が上がり、失敗コストが下がり、最後に評価コストを下げられる
  • 見えない失敗コスト(調査時間、恒久化した過剰検査、失った受注)が実際には大きい

この分野を扱うなら ― QUALIKEEP でできること

正直にお伝えすると、QUALIKEEP は原価計算や会計のシステムではありません。品質コストの集計、金額の按分、費用の分類——いずれも対象外です。QUALIKEEP が関われるのは、内部失敗コストの一部を数字にするという限られた部分です。

領域QUALIKEEP が担える範囲対象外(他の仕組みで扱う領域)
廃棄の記録期限切れや不使用で廃棄した材料のロットと数量、理由の記録——
期限切れの防止スキャン時の警告——
金額の計算(該当なし)原価の計算、費用の集計・按分は会計システムや表計算の領域
品質コストの分類(該当なし)4分類への振り分けは自社の定義に基づく作業です
手直し・再検査の工数(該当なし)工数の把握は工数管理の仕組みの領域
コストの削減保証しません品質コストが下がることを保証するものではありません

関われるのは1行目です。「今月いくら捨てたか」「なぜ捨てたか」は、内部失敗コストの入口にあたる数字です。ここが手書き台帳や記憶に頼っている状態では、品質コストの議論を始める材料がありません(「期限切れ廃棄ロスの分析」)。

ご注意

本記事は一般的な解説です。1:10:100は経験則として広く用いられている比率であり、特定の実証研究に基づく確定値ではありません。自社の実態は、自社のデータで確認してください。

参考・出典

  1. 日本品質管理学会
  2. 日本規格協会(JSA)

※ 外部サイトの内容・URL は変更される場合があります。最新の情報は各機関の公式ページをご確認ください。

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