この記事の要点SUMMARY
- 2024年度の推計で食品ロスは461万トン。事業系237万トン、家庭系224万トンとほぼ半々
- 事業系の内訳では食品製造業が110万トンと最大。外食70万トン、小売48万トン、卸売9万トン
- 事業系は2000年度比で2030年度までに60%削減という目標が置かれている
「食品ロス」という言葉は広く知られていますが、どこで、どれだけ発生しているかを数字で把握している人は多くありません。そして意外なことに、発生量がもっとも多い業種は食品製造業です。この記事では、公表されている推計値をもとに、食品ロスの構造を整理します。
まず全体の数字
| 区分 | 2024年度の推計値 | 割合 |
|---|---|---|
| 合計 | 461万トン | 100% |
| 事業系(事業活動から発生) | 237万トン | 約51% |
| 家庭系(家庭から発生) | 224万トン | 約49% |
注目したいのは、事業系と家庭系がほぼ半々という点です。「食品ロスは飲食店の食べ残しの問題」というイメージがありますが、実際には家庭からの発生も同程度あります。
推計値であることに注意
これらは実測ではなく推計値です。算出方法が見直されることもあり、過年度との単純比較には注意が要ります。数字を引用する際は、公表元と年度を明示するのが安全です。
事業系の内訳 ― 製造業が最大
事業系237万トンを業種別に分けると、次のようになります。
| 業種 | 2024年度の推計値 | 事業系に占める割合 | 主な発生要因 |
|---|---|---|---|
| 食品製造業 | 110万トン | 約46% | 規格外品、製造工程での発生、返品、期限切れ |
| 外食産業 | 70万トン | 約30% | 食べ残し、仕込みの余り、仕入れの過剰 |
| 食品小売業 | 48万トン | 約20% | 売れ残り、期限切れ、鮮度劣化 |
| 食品卸売業 | 9万トン | 約4% | 返品、破損、期限切れ |
**食品製造業:110万トン**
**事業系の最大**。工程内での発生と規格外品が中心
外食産業:70万トン
食べ残しと仕込みの余り
食品小売業:48万トン
売れ残り、期限切れ
食品卸売業:9万トン
返品、破損
「食品ロス対策」の議論が消費者向けの啓発に集まりがちな一方、量としては製造業が最大という構図です。ここが本記事でお伝えしたい要点です。
「食品ロス」と「食品廃棄物」は違う
数字を読むときに混乱しやすいのが、この2つの用語です。食品廃棄物のほうが範囲が広く、食品ロスはその一部です。
| **食品廃棄物** | **食品ロス** | |
|---|---|---|
| 範囲 | 食品由来の廃棄物全般 | そのうち、本来食べられるのに捨てられたもの |
| 含むもの | 骨、皮、芯、殻、卵殻、コーヒーかす など | 規格外品、期限切れ、食べ残し、売れ残り |
| 量 | 食品ロスより大きい | 食品廃棄物の一部 |
| 削減の考え方 | 発生自体は避けにくい部分がある | 減らせる余地が大きい |
製造業でいえば、トリミングで出る不可食部は食品廃棄物だが食品ロスではなく、規格外で廃棄した製品は食品ロス、という切り分けです。両者を混ぜて集計すると、削減の議論が的を外します。
削減目標
| 区分 | 目標 |
|---|---|
| 事業系 | 2000年度比で、2030年度までに60%削減 |
| 家庭系 | 同様に2030年度に向けた削減目標が置かれている |
| 根拠 | 食品ロスの削減の推進に関する法律(食品ロス削減推進法)等に基づく方針 |
事業系については、目標の達成が報告された年度もあります。ただし目標は継続しており、また業種ごとに進み方は異なります。
製造業で発生する食品ロスの中身
110万トンという数字を、現場の事象に分解します。発生の性質が違うので、対策も変わります。
| 発生の型 | 内容 | 減らせる余地 | 打ち手の方向 |
|---|---|---|---|
| 規格外品 | 重量・形状・色が規格から外れたもの | 中程度 | 規格の見直し、二次利用(別商品化、加工用) |
| 工程内での発生 | 立ち上げ・切替時のロス、ライン内の残留、洗浄で流れる分 | 大きい | 切替回数の見直し、段取りの改善、歩留まりの管理 |
| 期限切れ | 原材料・半製品・製品が期限内に使われなかった | 大きい | 在庫の適正化、先入れ先出し、期限の可視化 |
| 保管条件の逸脱 | 温度管理の失敗などで使えなくなった | 中程度 | 設備・記録の改善 |
| 不適合・作り直し | 誤投入、条件外れによる廃棄 | 大きい | 誤投入の防止、工程管理 |
| 返品 | 流通から戻ってきたもの | 小〜中 | 需要予測、商慣行の見直し |
「減らせる余地が大きい」と書いた3つ——工程内での発生、期限切れ、不適合——は、いずれも品質管理の領域と重なります。つまり食品ロスの削減は、環境の取り組みというより品質と生産管理の改善として進めるほうが実際に動きます。
「なぜ捨てたか」の内訳がないと動けない
総量だけを追いかけても、どこに手を打つべきかは分かりません。上の表のどの型がどれだけあるかを把握して初めて、対策の優先順位が決まります。この点はFSSC 22000 v6が食品ロスを要求事項に入れた際も同じ論点になっています(「FSSC 22000 v6で強化された要求」)。
期限切れロスは、なぜ繰り返すのか
前の表で「減らせる余地が大きい」とした3つのうち、期限切れはとくに繰り返し発生します。理由は、単純な注意不足ではなく構造にあるからです。
新しい在庫が入る
納品されたものを、空いている手前に置く
**手前から取る**
**取り出しやすいので、新しいほうから使われる**
**古いものが奥に残る**
そして次の納品でさらに奥へ押し込まれる
期限切れ
**気づいたときには使えない**
これは作業者の怠慢ではなく、「手前から取る」という自然な動作が、そのまま後入れ先出しになってしまうという配置の問題です(「先入れ先出しとは」)。
| 期限切れが起きる要因 | 中身 | 打ち手の方向 |
|---|---|---|
| 置き方 | 手前から取ると新しいものが先に出る | 流動棚、片側から入れて反対から出す配置 |
| 期限が見えない | 箱の底や側面に印字されていて読めない | 見える向きに置く、表示を足す |
| 開封後期限が分からない | 開封日が書かれていない | 開封日を記録する(「開封後期限と有効期限の違い」) |
| 発注量が多い | まとめ買いの単価メリットと、期限切れ損失の綱引き | 発注点と発注量の見直し(「発注点と安全在庫」) |
| 使う量が読めない | 需要変動、試作の中止、レシピ変更 | 少量品の在庫方針を分ける |
| 気づくのが遅い | 期限が近いことに誰も気づかない | 期限が近い在庫を把握する手段 |
最下行が実は重要です。期限切れは「切れた瞬間」に発生するのではなく、「切れそうなのに気づかない期間」に決まります。切れる前に気づけば、優先して使う、別用途に回す、といった選択ができます。気づくのが切れた後なら、選択肢は廃棄だけです。
「もったいない」の前に「見えていない」
期限切れ廃棄を減らそうという取り組みは、しばしば意識の問題として扱われます。しかし実際には、期限が近い在庫が見えていないことが原因の大半です。見えていれば、多くの現場は自然に優先して使います。意識を変えるより、見える状態を作るほうが早い場面が多くあります。
数字を扱うときの注意
- 推計値である:実測ではありません。算出方法の見直しで数値が動くことがあります
- 年度を明示する:毎年更新されるため、引用時は年度が必須です
- 単位に注意:万トン単位と、1人当たり(kg/年)の指標が混在します
- 食品廃棄物との区別:範囲が違うので、混ぜると議論がずれます
- 業種の区分:食品製造業と外食の境界(中食など)は製品によって扱いが変わりえます
まとめ
- 2024年度の推計で食品ロスは461万トン。事業系237万トン、家庭系224万トンでほぼ半々
- 事業系の内訳では食品製造業が110万トンで最大。外食70万、小売48万、卸売9万トン
- 食品ロスは食品廃棄物の一部。不可食部は含まれない
- 事業系は2000年度比で2030年度までに60%削減という目標が置かれている
- 製造業のロスのうち減らせる余地が大きいのは、工程内での発生・期限切れ・不適合。いずれも品質管理と重なる
- 期限切れは「手前から取ると新しい方が先に出る」という配置の問題。切れる前に気づけるかで結果が変わる
この分野を扱うなら ― QUALIKEEP でできること
QUALIKEEP が関われるのは、記事の後半で挙げた発生の型のうち、期限切れと、その手前の在庫管理という部分です。原材料の受入・開封・使用・廃棄をQRスキャンで記録し、期限切れはスキャン時に警告します。廃棄した数量と理由も記録に残ります。
| 領域 | QUALIKEEP が担える範囲 | 対象外(他の仕組みで扱う領域) |
|---|---|---|
| 期限切れの防止 | スキャン時の判定と警告します。先入れ先出しの逸脱も検知 | —— |
| 廃棄の記録 | ロット単位の廃棄数量と理由。内訳を出す材料になる | —— |
| 工程内の歩留まり | (該当なし) | ライン内の残留、洗浄ロス、収率の管理は生産管理・設備の領域 |
| 廃棄物の集計・報告 | (該当なし) | 食品廃棄物の総量集計、マニフェスト管理、食品リサイクル法に基づく定期報告、環境報告書の作成はいずれも対象外 |
| 需要予測・生産計画 | (該当なし) | 返品や売れ残りに関わる計画は基幹システムの領域 |
| ロスの削減 | 保証しません | 食品ロスが減ることを保証するものではありません |
つまり、「なぜ捨てたか」の内訳のうち、期限切れの分を数字にする道具です。工程内のロスや返品は別の仕組みで見る必要があります。
期限切れで捨てた分、ロットごとに残っていますか。
食品・飲食の現場での使い方を見る →ご注意
本記事の数値は公表されている推計値であり、年度によって更新されます。引用の際は農林水産省・環境省の最新の公表資料をご確認ください。算出方法の変更により、過年度との単純比較ができない場合があります。
参考・出典
※ 外部サイトの内容・URL は変更される場合があります。最新の情報は各機関の公式ページをご確認ください。