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NO.107トレーサビリティ / 記録管理

識別と現品票とは?― 「見れば分かる」が全ての土台になる理由

識別は、モノが何であるかを現物から分かるようにすることです。地味ですが、トレーサビリティも期限管理も不適合品の管理も、識別が崩れた時点で成立しなくなります。現品票に何を書くか、識別が消える瞬間、そして「無いものを無いと示す」空札の考え方までを整理します。

公開QUALIKEEP 編集部

この記事の要点SUMMARY

  • 識別は現物を見れば何か分かる状態にすること。トレーサビリティも期限管理も識別の上に成り立つ
  • 識別が消えるのは、小分け・移し替え・包装の開封・仕掛品になった瞬間
  • 状態の識別(未検査・合格・不合格・特別採用)も、モノの識別と同じくらい重要

品質管理の話題としては、もっとも地味なテーマかもしれません。しかし識別——現物を見れば何か分かる状態——が崩れると、その上に載っているすべての管理が同時に崩れます。トレーサビリティ、期限管理、不適合品の管理、在庫管理。すべて「これが何か分かる」ことを前提にしています。この記事では、その土台を整理します。

識別が崩れると何が崩れるか

**識別(これが何か分かる)**

**すべての土台**

期限管理

「何が」分からなければ、期限も分からない

トレーサビリティ

「どのロットか」が分からなければ追跡できない

不適合品の管理

「これは不合格品」と示せなければ隔離できない

在庫管理

何がどれだけあるか分からない

識別は最下層。ここが抜けると上が全部成り立たない

ISO 9001でも箇条8.5.2は「識別及びトレーサビリティ」という並びになっています。識別が先に来るのは、順序として当然だからです。

2種類の識別

実務では、識別が2つの意味を持ちます。混同されやすいので分けて考えます。

**モノの識別****状態の識別**
答える問いこれは何かこれはどういう状態か
内容品名、品番、ロット、数量、期限未検査、合格、不合格、保留、特別採用、修理待ち
変わるか基本的に変わらない工程を進むごとに変わる
崩れると取り違えが起きる未検査品や不合格品が使われる
よくある表し方現品票、ラベル、刻印札、置き場、テープの色

状態の識別のほうが崩れやすいです。モノの識別は一度貼れば変わりませんが、状態は工程を進むごとに変わるため、更新が必要になります。そして更新は忘れられます。

「何もない」が合格を意味する運用は危うい

多くの現場では、不合格品に赤札を貼り、未検査品に黄札を貼り、何も貼っていないものが合格品という運用になっています。この方式の弱点は、「札を貼り忘れた不合格品」が合格品と区別できないことです。何もない状態が合格を意味すると、貼り忘れがそのまま流出につながります。

現品票に何を書くか

現品票(現品表、識別票)に書く項目は、後から何を問われるかで決まります。

項目必要な理由抜けると
品名・品番何かを特定する取り違え
ロット番号追跡の単位トレーサビリティが成立しない
数量在庫と実物の一致棚卸しが合わない
受入日/製造日古さの判断、先入れ先出しどちらが古いか分からない
期限(使用期限・開封後期限)使ってよいかの判断期限切れの使用
開封日開封後期限の起点残り時間が計算できない
状態使ってよいか未検査品の使用
担当者責任の所在確認の経緯が追えない
保管条件扱い方の指示不適切な保管

太字にした項目が、実務で抜けやすく、かつ抜けると影響が大きいものです。とくに開封日は、現品票の様式に欄がないことすらあります(「開封後期限と有効期限の違い」)。

識別が消える4つの瞬間

識別は、貼った時点では成立しています。問題は、特定の作業をした瞬間に失われることです。

**① 小分け・移し替え**

**元の容器から出した瞬間、ラベルが付いてこない**

**② 包装の開封**

**外袋に印字された情報が、中身と切り離される**

**③ 仕掛品になる**

**加工されて形が変わり、元が何だったか分からなくなる**

**④ 混合・調合**

**複数のロットが混ざり、1つの識別で表せなくなる**

この4つの場面で、情報が引き継がれるかが分かれ目
場面起きること打ち手の方向
小分け中身の分からない容器が生まれる小分け先にも表示する。表示なしで小分けさせない
開封外装の情報が失われる中身側に情報を移す。開封日を追記する
仕掛品識別が付かず「たぶんあれ」になる仕掛品用の識別を用意する。台車・容器単位で管理
混合複数ロットが1つになる構成したロットを記録する(1対多の記録が要る)

④の混合は、識別の考え方として特殊です。1つのものに複数の由来があるため、現品票に1つのロット番号を書くだけでは表せません。「このバッチは、材料Aのロット1と材料Bのロット2から作られた」という記録が別に必要になります。

仕掛品の識別が、いちばん手薄になりやすい

受入時と出荷時は識別がしっかりしているのに、その間の仕掛品だけ識別がないという現場は珍しくありません。「今日作っている分だから分かる」という前提で運用され、日をまたいだり、途中で担当が変わったりした瞬間に崩れます。台車や容器に識別を付ける運用が現実的です。

「無い」ことを示す

識別の考え方で見落とされやすいのが、空になった場所の扱いです。

状況問題対応の例
置き場が空「使い切った」のか「まだ来ていない」のか分からない空札(空であることを示す札)を置く
現品票だけ残っている中身がないのに票がある。あると勘違いする票の回収を作業に含める
中身があるのに票がない何か分からないものが存在する発見時のルールを決める(隔離、調査)
一部だけ使った残量が分からない残量を記載する運用

3行目が最も危険です。「何か分からないもの」が現場にある状態は、いずれ何かに使われます。「たぶんこれだろう」という推測で使われた瞬間、トレーサビリティは断絶します。識別のない現物を見つけたときのルールを決めておく価値があります。

表示の実務的な条件

識別票は「貼ってあれば良い」わけではありません。読める状態が続くかが問われます。

条件よくある失敗
読めること油性ペンの字が擦れて消える、薬品で溶ける
剥がれないこと結露で剥がれる、冷凍で粘着が効かない
汚れに耐えること粉じん、油、水で見えなくなる
位置が一定貼る場所が決まっていないと、探すことになる
書く内容が一定人によって書き方が違うと、読み間違いが起きる
異物にならないこと札やテープ自体が製品に混入する(「異物混入の分類と対策」)

1行目は現場で非常に多い問題です。冷凍庫に入れた容器の手書きラベルは、結露と霜で読めなくなります。塗料缶に書いた開封日は、溶剤で消えます。「書いたけれど読めない」は、書いていないのとほぼ同じです。

よくある誤解

  • 「識別=トレーサビリティ」:識別は「何か分かる」、トレーサビリティは「追跡できる」。識別が先にあります
  • 「ラベルが貼ってあれば識別できている」:読める状態が続いているかが条件です
  • 「合格品には何も貼らなくてよい」:札の貼り忘れが、そのまま流出につながります
  • 「小分けは一時的だから表示は不要」:中身の分からない容器が生まれる最大の原因です
  • 「仕掛品は見れば分かる」:担当が変わり、日をまたぐと分からなくなります

まとめ

  • 識別はすべての管理の土台。崩れると期限管理もトレーサビリティも不適合品の管理も成立しない
  • モノの識別(何か)と状態の識別(どういう状態か)は別。状態のほうが崩れやすい
  • 識別が消えるのは、小分け・開封・仕掛品化・混合の4つの瞬間
  • 「無い」ことを示す運用も要る。識別のない現物を見つけたときのルールも決めておく
  • 読める状態が続くかが条件。擦れる・溶ける・剥がれる・霜で見えないは、書いていないのと同じ

この分野を扱うなら ― QUALIKEEP でできること

QUALIKEEP が扱っているのは、まさにこの領域です。現物にQRコードを紐づけ、受入・開封・使用・廃棄をスキャンで記録します。手書きの現品票では崩れやすい部分——開封日、期限、状態——を、スキャンした記録の側に持たせる形になります。

領域QUALIKEEP が担える範囲対象外(他の仕組みで扱う領域)
モノの識別QRコードと記録の紐づけ。品番・ロット・期限・開封日——
開封日の記録スキャンした時刻が起点になるので、書き忘れが起きにくい——
状態の管理受入後の状態を記録し、使用時のスキャンで判定できる——
ラベルの印刷(該当なし)ラベルプリンタとの連動、耐水・耐油・耐薬品ラベルの選定はいずれも資材と設備の領域
誤選定の防止保証しません取り違えをなくすことを保証するものではありません。コードが読める状態にあり、スキャンする運用が定着している場面に限って効きます
仕掛品の識別限定的工程内の仕掛品管理、台車単位の追跡はMES等の領域
混合・調合の構成記録限定的複数ロットから1つを作る配合の記録は生産管理の領域
在庫の数量管理ロット単位の残量(受入数量 − 確定消費 − 使用中の見込み)ロケーション管理、棚卸しはWMSの領域

正直に書くと、仕掛品と調合の2行は苦手な領域です。工程内の仕掛品管理や、複数ロットから1つを作る配合の記録は、QUALIKEEP だけでは続きません。得意なのは購入した現物(原材料・副資材)が、受入から使い終わるまでの区間です。その区間で「読めなくなった手書きラベル」を置き換えたい場合に向いています。

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食品・飲食の現場での使い方を見る →塗装・接着の現場での使い方を見る →

ご注意

本記事は一般的な解説です。識別・表示の要求事項は、適用される規格や法令(食品表示、医療機器のUDI等)によって具体的に定められている場合があります。実際の運用は自社に適用される要求に従ってください。

参考・出典

  1. 日本規格協会(JSA)
  2. 日本産業標準調査会(JISC)

※ 外部サイトの内容・URL は変更される場合があります。最新の情報は各機関の公式ページをご確認ください。

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