← ARTICLE INDEX
NO.092食品安全 / ヒューマンエラー

異物混入の分類と対策 ― 検出機で見つかるもの、見つからないもの

異物は硬質異物・軟質異物・生物系に大別され、健康被害につながりやすいのは硬質異物です。金属検出機とX線検査機はそれぞれ原理が違い、検出できるものも違います。何が検出できないのか、そして「そもそも入れない」ための工程内対策までを、図表を交えて整理します。

公開QUALIKEEP 編集部
食品安全ヒューマンエラー異物混入金属検出機X線検査工程管理

この記事の要点SUMMARY

  • 異物は硬質・軟質・生物系に大別され、健康被害の要因として大きいのは金属やガラスなどの硬質異物
  • 金属検出機は金属しか検出できず、X線検査機も髪の毛・ビニール・虫・木片などは検出が難しい
  • 検出機は最後の網であって、本質は「そもそも入れない」工程内の対策

異物混入は、食品工場でもっとも起きやすく、もっとも回収につながりやすい事故です。対策として金属検出機やX線検査機を導入している工場は多いのですが、これらの機械には検出できないものがあります。この記事では、異物の種類ごとの性質と、検出機の原理・限界、そして工程内でどう防ぐかを整理します。

異物の3つの分類

分類健康への影響検出のしやすさ
硬質異物金属片、ガラス、硬質プラスチック、石、骨大きい。口腔内の傷、歯の破損、内臓の損傷種類による(後述)
軟質異物毛髪、繊維、ビニール、ゴム、紙直接の健康被害は比較的小さい難しい
生物系虫、カビ、毛、微生物由来のもの不快感が大きい。衛生管理の問題を示唆難しい

報告されている健康被害の要因としては、金属やガラスなどの硬質異物が大きな割合を占めます。一方、苦情の件数として多いのは毛髪や虫といった軟質・生物系です。「健康被害の重さ」と「苦情の多さ」は別という点を押さえておくと、優先順位を考えやすくなります。

**硬質異物**

**件数は少ないが、健康被害につながりやすい**。回収の判断も厳しくなる

**軟質・生物系**

**苦情としては多い**。健康被害は比較的小さいが、信用への影響は大きい

重さと頻度は一致しない。両方への備えが要る

金属検出機 ― 何を、どう見ているか

金属検出機は、電磁誘導という原理を使っています。コイルで磁界をつくり、そこを金属が通ると磁界が乱れる——その乱れを捉えて検出します。

項目内容
検出できるもの鉄、ステンレス、アルミ、銅などの金属全般
検出できないものガラス、石、骨、硬質プラスチック、ゴム、木片、毛髪、虫
得意な金属鉄(磁性がある)。感度が高い
苦手な金属ステンレス(非磁性のもの)。鉄より感度が落ちる
導入のしやすさ比較的安価で普及している

ステンレスは意外と見つけにくい

現場ではステンレス製の器具が多く使われますが、非磁性のステンレスは鉄に比べて検出感度が落ちます。「金属検出機を通しているから安心」と考えていると、もっとも混入しやすい材質を見逃しかねません。使っている器具の材質と、検出機の感度の関係を確認しておく価値があります。

製品側の影響 ― 製品効果

金属検出機には、もう一つ厄介な性質があります。製品そのものが検出に影響するのです。

製品の性質起きること
水分・塩分が多い製品自体が電気を通すため、信号が出る。感度を下げざるを得ない
温度が高い同様に影響が出ることがある
アルミ蒸着の包装包装材そのものに反応する
製品の厚み・形状のばらつき安定した判定が難しくなる

つまり、水分や塩分の多い製品では、そもそも高い感度で運用できないことがあります。カタログ上の検出性能と、実際の製品での検出性能は別物、ということです。

X線検査機 ― 密度の違いを見る

X線検査機は、原理がまったく違います。X線を当てて透過した量の差から画像をつくり、周囲より密度が高い部分を異物として捉えます。

項目内容
検出できるもの金属に加えて、ガラス、石、骨、貝殻、硬質ゴムなど密度の高いもの
検出が難しいもの毛髪、ビニール、虫、木片、紙——製品と密度が近いもの
あわせてできること欠品、個数、破損、充填量の確認など
導入の課題金属検出機に比べて導入・維持の費用が高い。X線を扱うための管理も必要

**金属検出機**

**金属だけ**を見る。安価で普及している

**X線検査機**

**密度の差**を見る。金属+ガラス・石・骨まで届く

**どちらでも難しい領域**

**毛髪、ビニール、虫、木片**——密度が製品と近く、金属でもない

2つの機械は、見ているものが違う。片方だけでは穴が残る

両方を併用すれば守備範囲は広がりますが、それでも埋まらない領域が残ります。毛髪や虫は、機械では捉えきれないのが実情です。

だから工程内で防ぐ

検出機で見つからないものがある以上、本質的な対策はそもそも入れないことになります。異物は入ってくる経路が決まっているので、経路ごとに手を打ちます。

異物の出どころ典型的な混入経路対策の方向
原材料由来仕入れた時点で入っている(骨、殻、石、包装材の破片)受入時の確認、供給者の管理(「受入検査とCoA」)
設備由来ボルトの緩み、金網の破れ、ベルトの摩耗、刃こぼれ始業・終業時の点検、破損時の記録と回収
器具・治具由来ブラシの毛、へらの欠け、計量器具の破片使用前後の員数確認、破損しやすいものの管理
人由来毛髪、爪、絆創膏、ボタン、装飾品入室手順、着衣の管理、粘着ローラー
包装材由来フィルムの切れ端、段ボールの繊維、シール片開梱場所の分離
環境由来虫、粉じん、剥がれた塗装防虫管理、建屋の維持

見落とされやすい発生源 ― 開梱作業

前の表で「包装材由来」を挙げましたが、これは検出機でもっとも捕まえにくい種類の異物を生む工程です。理由は単純で、フィルムや紙は金属でもなく、製品と密度も近いからです。

開梱時に発生するもの出どころ検出のしやすさ
フィルムの切れ端袋をハサミやカッターで切ったときの端材金属検出機・X線とも困難
段ボールの繊維・紙片外装を開けるとき、粉状に舞う同上
結束バンド・PPバンドの破片切断したときに飛ぶ同上(材質による)
シール・ラベルの剥がれ貼り替え、剥がし残り同上
輸送用の緩衝材発泡材の破片同上
ホチキス針・金属クリップ書類や梱包の留め具金属なので検出できる

最下行だけが救いです。金属製のものは検出機で捕まえられます。逆に言えば、それ以外は工程内で防ぐしかありません。

**外装(段ボール)を開ける**

**製造区域の外で行う**。段ボールを中に持ち込まない

**内袋を開ける**

製造区域内。切り方を決める(ハサミの位置、切れ端の回収)

投入

中身だけが工程に入る状態

開梱する場所を分けるだけで、混入経路が一つ減る
開梱時の工夫狙い
開梱場所を製造区域の外に分ける段ボールと外装フィルムを中に持ち込まない
切る位置を決める端材が出る場所を一定にし、回収しやすくする
ハサミ・カッターの管理刃こぼれ、置き忘れの防止(金属異物にもなる)
切れ端の回収を手順に入れる「切ったら回収」まで含めて1つの作業にする
開梱用の容器を決める端材の受け皿を用意し、床に落とさない
袋の色を製品と変える万一混入しても目視で気づける

最下行は費用がかからず効果の高い工夫です。白い製品に白い袋では、混入しても見えません。青など製品にない色を使えば、目視でも検出でも気づける可能性が上がります。異物対策の考え方として、「検出しやすくする」も立派な対策です。

「壊れたら探す」を仕組みにする

設備・器具由来の異物で決定的に重要なのが、壊れたことに気づき、破片を探すという運用です。

器具・設備が破損する

ブラシの毛が抜ける、へらが欠ける、金網が破れる

**気づけるか**

**使用前後で員数や状態を確認しているか**。していなければ、そのまま流れる

破片を探す

見つからない場合、その間の製品をどう扱うか

**影響範囲を絞る**

**前回の点検からこの点検までに作った製品**が対象。点検の間隔が範囲を決める

欠けに気づかなければ、製品に入ったまま流れる

最後の段階が要点です。点検の間隔が長いほど、対象になる製品の範囲が広がります。1日1回の点検なら1日分、1時間ごとなら1時間分。ここが、点検頻度を決める実務的な根拠になります。

破損しやすいものはリスト化しておく

ガラス・硬質プラスチック・ブラシ・刃物など、破損したときに異物になりうるものを一覧にし、どこに何本あるかを決めておく運用が広く使われています。「何本あるはずか」が決まっていなければ、「1本足りない」に気づけません。

検出機は「最後の網」

整理すると、対策には層があります。検出機は最終段であって、そこに頼りきる設計は弱い、ということです。

対策性格
1(上流)原材料の管理、供給者の選定入れないための最上流
2設備・器具の設計と点検発生させない
3入室・着衣の管理持ち込ませない
4ふるい、マグネット、フィルター工程内で物理的に除く
5(最終)金属検出機、X線検査機最後に見つける。見つからないものもある

4行目の工程内での物理的な除去は、意外と軽視されがちですが効果的です。ふるいやマグネットは、検出機と違って取り除いてくれるという点で優れています。

よくある誤解

  • 「金属検出機を通しているから安心」:ガラス・石・骨・プラスチックは検出できません。ステンレスも鉄より苦手です
  • 「X線なら何でも見つかる」:製品と密度が近いもの(毛髪、ビニール、虫、木片)は難しいです
  • 「検出機の感度はカタログどおり」:水分や塩分の多い製品では、実際の運用感度が下がります
  • 「異物が出たら検出機を強化すればよい」:出どころを絶つほうが本質的です
  • 「軟質異物は健康被害が小さいから軽視してよい」:苦情としては多く、信用への影響は大きくなります

まとめ

  • 異物は硬質・軟質・生物系に大別され、健康被害につながりやすいのは硬質異物
  • 金属検出機は金属のみ。ステンレスは鉄より感度が落ち、水分・塩分の多い製品では感度を上げにくい
  • X線検査機は密度差を見るので金属以外も検出できるが、毛髪・ビニール・虫・木片は難しい
  • 検出機は最後の網。本質は原材料・設備・器具・人という出どころを絶つこと
  • 開梱作業は検出しにくい異物(フィルム片・紙片)の発生源。開梱場所を分ける、袋の色を変えるといった工夫が効く
  • 器具の破損に気づく仕組みが要。点検の間隔が、影響範囲の広さを決める

この分野を扱うなら ― QUALIKEEP でできること

正直にお伝えすると、QUALIKEEP は異物を検出する装置ではありません。金属検出機やX線検査機とは何の関係もなく、画像解析も行いません。QUALIKEEP が関われるのは、異物の出どころのうち原材料側の記録と、影響範囲を絞るという部分だけです。

領域QUALIKEEP が担える範囲対象外(他の仕組みで扱う領域)
原材料ロットの記録受け入れたロットと、使用した製品の結びつけ——
影響範囲の特定特定ロットに問題が見つかったとき、使用先を辿れる——
異物の検出(該当なし)金属検出機、X線検査機、画像検査はいずれも専用装置の領域
器具の員数管理(該当なし)破損しやすい器具の本数管理、点検記録は対象外
設備の点検(該当なし)金網・ベルト・刃物の点検は保全の領域
異物混入の防止保証しません異物混入をなくすことを保証するものではありません

効くのは2行目です。原材料に由来する異物が見つかったとき、そのロットをどの製品に使ったかを辿れれば、回収の範囲を絞れます。逆に辿れなければ、その期間の製品すべてが対象になりえます(「リコールと影響範囲の特定」)。

原材料に異物が見つかったとき、使用先を辿れますか。

食品・飲食の現場での使い方を見る →機械・電子部品の現場での使い方を見る →

ご注意

本記事は公開情報をもとにした一般的な解説です。検出機の性能・適用範囲は機種と製品により大きく異なります。導入・運用にあたっては、装置メーカーおよび自社製品での検証結果に基づいて判断してください。

参考・出典

  1. 厚生労働省「食品衛生法」関連情報
  2. 消費者庁「食品リコール(自主回収)情報」

※ 外部サイトの内容・URL は変更される場合があります。最新の情報は各機関の公式ページをご確認ください。

FEEDBACK

この記事について、ご質問・ご意見をお寄せください

いただいた内容がそのままサイトに公開されることはありません運営が読んで、記事の加筆や次に書くテーマの参考にします。返信をご希望の場合はメールアドレスをご記入ください (内容により、お返事に時間をいただくことがあります)。

送信いただいた内容の取り扱いはプライバシーポリシーをご覧ください

FREE TEMPLATES ・ 登録不要

この記事の内容を、そのまま記録に落とすための様式

PDF は印刷して手書きする用、Excel は社内のルールに合わせて列を足す用です。 A4 に収まる印刷設定が入っています。改変・社内配布は自由です。

  • 材料使用 日次記録表

    ロットごとの補正後の期限。12 行ぶんを手で計算するのが現実的でない欄です。

    PDFExcel

テンプレートの一覧と使い方を見る →

ABOUT QUALIKEEP

開封期限の管理を、現場のスマホで仕組みに。

QR スキャンで開封日時を自動記録。気温・湿度に応じて期限を自動補正し、期限前に通知します。記録は「いつ・誰が・どの材料を」までサーバ側に残ります。