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NO.083法規制 / サプライチェーン

CSDDD(企業持続可能性デューデリジェンス指令)とは?― オムニバス法で何が変わったか

CSDDDは、企業に人権・環境のデューデリジェンスを義務づけるEUの指令です。2026年のオムニバス法により対象企業の閾値が大きく引き上げられ、適用時期も2028年7月26日へ延期されました。改正前後の違い、日本企業が対象になる条件、そして対象外でも影響が及ぶ理由を整理します。

公開QUALIKEEP 編集部
法規制サプライチェーンEU規制CSDDD人権デューデリジェンスサステナビリティ

この記事の要点SUMMARY

  • CSDDDは企業に人権・環境のデューデリジェンスを義務づけるEUの指令
  • 2026年のオムニバス法で閾値が大幅に引き上げられ、対象企業が絞り込まれた
  • 直接の対象は大企業に限られるが、その取引先として情報提供を求められる形で中小企業にも影響する

CSDDD(Corporate Sustainability Due Diligence Directive:企業持続可能性デューデリジェンス指令)は、企業に対して人権・環境への影響を調べ、対処することを義務づけるEUの指令です。2024年の成立当時は「対象が広い」として大きな話題になりましたが、2026年のオムニバス法によって内容が大きく変わりました。この記事では、いまの姿を整理します。

そもそも何を求める指令か

中心にあるのはデューデリジェンス(相当な注意)という考え方です。「悪いことをしていない」だけでなく、自社の事業や取引先において悪影響が起きていないかを調べ、見つけたら対処することを求めます。

① 方針への組み込み

経営方針とリスク管理の仕組みにデューデリジェンスを位置づける

② 影響の特定

人権・環境への実際の/潜在的な悪影響を洗い出す

③ 防止・軽減

見つけた悪影響を止める、または減らす措置をとる

④ 苦情処理の仕組み

影響を受ける人が声を上げられる窓口を設ける

⑤ 監視と情報開示

措置の効果を確認し、取り組みを公表する

継続的に回すサイクルとして設計されている

②の「影響」には、労働条件、安全衛生、差別、児童労働、強制労働といった人権の問題と、汚染、生物多様性、廃棄物といった環境の問題が含まれます。

オムニバス法による変更 ― 対象が大きく絞られた

2026年に採択されたオムニバス法(簡素化パッケージ)により、CSDDDは大幅に見直されました。企業にとっていちばん大きいのは、対象になる企業の閾値の引き上げです。

当初の枠組み(成立時)**オムニバス法による改正後**
対象の考え方段階的に対象を広げていく設計大企業に絞り込み
閾値(グループ1)より低い水準から従業員5,000人超かつ全世界売上15億ユーロ超
閾値(グループ2)同上従業員3,000人以上かつ売上9億ユーロ以上
EU域外企業EU域内売上で判定EU域内売上が上記水準を超える場合
適用開始規模により段階適用2028年7月26日(グループ1も1年延期され、同時期に)
義務の中身より広範簡素化された部分がある

「対象になるかも」と身構えていた企業の多くが外れた

成立当初は「サプライチェーンを通じて日本の中堅企業にも義務が及ぶ」と受け止められ、対応を検討し始めた企業が多くありました。改正後の閾値は従業員3,000人以上・売上9億ユーロ以上と高く、直接の対象になる日本企業はかなり限られます。まず自社が閾値を超えるかを確認するところから始めるのが実務的です。

日本企業が直接の対象になる条件

EU域内での売上はどれくらいか

EU域外企業は、EU域内の純売上高で判定される

閾値を超える → 直接の対象になりうる

**グループ2で売上9億ユーロ以上**が目安

閾値を超えない → 直接の対象ではない

**多くの日本企業はこちら**

ただし取引先が対象なら…

**情報提供や取り組みの説明を求められる立場になる**

まず自社が閾値を超えるかを確認する

最後の分岐が実務の本丸です。自社が対象でなくても、対象企業のサプライヤーであれば要求は降りてきます。取引先が自社のデューデリジェンスを実施するために、供給者である自社に情報を求めるからです。

降りてくる要求の形

求められること具体例準備しておくと楽なこと
取り組みの説明人権方針はあるか、教育はしているか方針の文書化、実施記録
質問票への回答労働時間、安全衛生、児童労働・強制労働の有無回答の元になる自社データの整理
上流の把握自社が仕入れている先はどこかサプライヤーリストの整備
現地監査の受入れ第三者による監査や訪問記録の準備、案内できる体制
契約条項への同意行動規範の遵守、是正への協力契約内容の確認

実務でしんどいのは2行目です。同じような質問票が、取引先ごとに違う様式で届きます。含有化学物質調査で起きていることと同じ構図です(「chemSHERPAとは」)。元になるデータを整理しておかないと、そのつど社内を探し回ることになります。

他のEU規制との関係

規制性格対象の広さ
CSDDDプロセスの義務(仕組みを作り実施する)大企業に限定
強制労働産品規則結果の禁止(該当産品を出さない)規模を問わない(「EU強制労働産品規則とは」)
EUDR産品ごとのデューデリジェンス対象7品目を扱う事業者(「EUDRとは」)
CSRD情報開示規模により段階適用

整理すると、CSDDDは「大企業に仕組みを作らせる」法律、強制労働産品規則は「誰であれ該当産品を出させない」法律です。CSDDDの対象から外れても、強制労働産品規則は規模を問わず関わってきます。ここを混同しないことが重要です。

よくある誤解

  • 「サプライチェーン全体に義務が及ぶ」:義務を負うのは閾値を超える大企業です。供給者は契約を通じて協力を求められる立場です
  • 「2024年に成立したので、その内容で準備すればよい」:2026年のオムニバス法で閾値と時期が変わりました。最新の内容を確認する必要があります
  • 「対象外なら何もしなくてよい」:取引先が対象なら、質問票や監査という形で要求が来ます
  • 「CSDDDの対象外=人権関連は無関係」:強制労働産品規則は規模を問いません。別の法律として関わります
  • 「EUに輸出していないから関係ない」:EUへ出す企業の供給者であれば、間接的に関わります

まとめ

  • CSDDDは企業に人権・環境のデューデリジェンスを義務づけるEUの指令
  • 2026年のオムニバス法で閾値が大幅に引き上げられ、対象が大企業に絞り込まれた
  • 適用は2028年7月26日からとされ、グループ1も同時期へ延期された
  • 直接の対象になる日本企業は限られるが、対象企業の供給者として要求が降りてくる
  • 規模を問わない強制労働産品規則とは別の法律。混同しないことが重要

この分野を扱うなら ― QUALIKEEP でできること

正直にお伝えすると、QUALIKEEP は人権デューデリジェンスのシステムではありません。方針の策定、影響評価、苦情処理の窓口、サプライヤー監査、情報開示——いずれも対象外です。CSDDDへの対応そのものは、サステナビリティ部門・調達部門と専門のサービスの領域になります。

QUALIKEEP が関われるのは、質問票や調査に答えるときの元データの一部、つまり「どの供給元から、いつ、どのロットを受け入れ、どの製品に使ったか」という記録だけです。人権に関する評価そのものは扱いません。

領域扱えるか補足
人権・環境の影響評価できません方針の策定、影響の特定、リスクのスコアリングは対象外です
サプライヤー監査の管理できません監査結果の管理、是正の追跡を行う機能はありません
ESG・CSRDの開示できませんサステナビリティ報告書やESGレポートの作成は対象外です
取引先の監査への合格保証しません欧州企業の調達審査や監査の結果を保証するものではありません
受入・使用の記録扱えます「どの供給元のどのロットを、いつ、どこに使ったか」という事実の記録に限られます

ご注意

本記事は公開情報をもとにした一般的な解説です。CSDDDは改正が行われた領域であり、各国の国内法化の状況によって細部が変わります。自社が対象になるかの判断を含め、実際の対応にあたっては欧州委員会の最新情報および専門家にご確認ください。

参考・出典

  1. 欧州委員会「Corporate sustainability due diligence」
  2. ジェトロ(日本貿易振興機構)

※ 外部サイトの内容・URL は変更される場合があります。最新の情報は各機関の公式ページをご確認ください。

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