この記事の要点SUMMARY
- Sunrise 2027は「2027年末までに小売POSが2次元コードのGTINを扱える状態にする」ことを目指すGS1の国際的な取り組み
- 法規制ではなく自主的な移行。ただし大手小売が対応時期をそろえつつあり、取引条件として降りてくる可能性がある
- 2次元コードはGTINに加えてロット・期限・シリアルを載せられる。1コードで販売と現場管理の両方をまかなえる点が本質
商品に印刷されているあの縞模様のバーコード——JANコード(国際的にはEAN/UPC)は、1970年代から半世紀にわたって流通を支えてきました。そのバーコードを、2次元コードへ移していこうという国際的な取り組みが進んでいます。GS1が主導する Sunrise 2027 です。この記事では、何がどう変わるのか、製造側は何を準備することになるのかを整理します(GS1の基本は「GS1・GTIN・データマトリックスとは」)。
Sunrise 2027とは何か
一言でいえば、「2027年末までに、小売のレジ(POS)が2次元コードからGTINを読み取って処理できる状態にしよう」という業界の目標です。GS1が世界共通の呼びかけとして進めています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 目標時期 | 2027年12月31日を目安に、小売POSが2次元コードのGTINを処理できる状態へ |
| 対象のコード | GS1 Digital Link URI を格納したQRコード、および GS1 DataMatrix |
| 読み取る側 | 小売のPOS、レジ、ハンディ、バックヤードのシステム |
| 印字する側 | メーカー・包材業者。パッケージのデザイン変更を伴う |
| 法的な性格 | 規制ではありません。業界の自主的な移行イニシアチブ |
| 既存バーコード | EAN/UPC、GS1 DataBar は用途がある限り併存する想定 |
「2027年に切り替わる」ではありません
Sunrise 2027は、ある日を境に全部が入れ替わる制度ではありません。「その時期までに読み取れる側の準備を整えよう」という目標であり、移行期には1次元と2次元の両方が印字された商品が流通する想定です。罰則もありません。ただし、大手小売が対応時期を合わせて動く以上、取引条件として降りてくる可能性は現実的です。
なぜ2次元にするのか ― 情報量が違う
理由は単純で、縞模様のバーコードには商品コードしか入らないからです。ロット番号も、使用期限も、シリアル番号も入りません。だから現場では、JANコードとは別に管理用のラベルを貼る、という運用が当たり前になっています。
| JAN/EAN・UPC(1次元) | GS1 DataBar | GS1 DataMatrix/QR(2次元) | |
|---|---|---|---|
| 格納できる情報 | GTINのみ | GTIN+一部の付帯情報 | GTIN+ロット+期限+シリアル など |
| 必要な面積 | 横長で場所を取る | 小さめ | 小さい面積に多くの情報 |
| 汚れ・かすれ耐性 | 弱い(線が切れると読めない) | 中程度 | 誤り訂正機能がある |
| 読み取り方向 | 向きを合わせる必要がある | 同左 | どの向きでも読める |
| POSでの現状 | 広く対応済み | 対応が進む | Sunrise 2027の対象 |
実務的にいちばん大きいのは、「1つのコードで販売と現場管理の両方をまかなえる」ようになる点です。いまは、レジ用のJANコードと、現場のロット・期限管理用のラベルが別々に存在しています。それが1つにまとまります。
GS1 Digital Link ― コードがURLになる
Sunrise 2027でよく出てくるのが GS1 Digital Link という考え方です。これは、商品コードを「読み取れる形のURL」として表現するしくみです。
たとえばQRコードの中身が単なる数字の羅列ではなく、GTINやロット番号を含んだ構造を持つURLになっている、と考えてください。そうすると、同じ1つのコードで次の両方が成り立ちます。
1つのQRコードを印字
GTIN・ロット・期限などを含む構造を持たせる
POS・現場のスキャナが読むとき
商品コードや付帯情報として解釈し、レジ処理や在庫管理に使う
消費者がスマホで読むとき
ウェブページとして開き、原材料・アレルゲン・使用方法などを表示できる
この「1つのコードが複数の役割を持てる」性質は、後述するDPP(デジタル製品パスポート)とも相性が良く、EU側の規制対応でも注目されています(「デジタル製品パスポートとは」)。
何が変わるか ― 立場別に見る
| 立場 | 影響 | 準備すること |
|---|---|---|
| 小売 | POS・スキャナ・レジシステムの対応が必要 | 機器の更新、ソフトの改修、レジ運用の訓練 |
| メーカー(印字側) | パッケージのデザイン変更、印字設備の見直し | 版下の作り直し、印字品質の検証、可変情報の印字 |
| 包材・印刷業者 | 2次元コードの版下・印字要求への対応 | 印字精度、検証機の導入 |
| 卸・物流 | ハンディ・WMSの読み取り対応 | 機器の更新、マスタの拡張 |
| 基幹システム側 | ロット・期限を扱えるデータ構造が要る | ここが実は一番重い(後述) |
見落とされやすいのは「印字」より「データ」
2次元コード対応というと、プリンタやラベラーの更新に目が行きます。しかし、より根が深いのは印字する内容を用意できるかです。
GTINは商品ごとに固定なので、版下に焼き込めば済みます。ところがロット番号と使用期限は、製造のたびに変わる可変情報です。これをコードに載せるには、その情報がシステム側で確定していて、印字の瞬間に渡せる必要があります。
| 載せたい情報 | 性質 | 用意できていないと起きること |
|---|---|---|
| GTIN | 商品ごとに固定 | (通常は問題にならない) |
| ロット番号 | 製造のたびに変わる | 手書き台帳にしかないと、印字データに渡せない |
| 使用期限 | 製造日から計算される | 計算ルールが人の頭の中にあると、自動化できない |
| シリアル番号 | 個体ごとに一意 | 採番の仕組みそのものが必要(「個体トレーサビリティ」) |
つまり、現場のロット・期限の管理が紙やExcelで完結している組織ほど、2次元コード対応でつまずきます。印字機は買えば手に入りますが、そこへ流し込むデータは買えないからです。
意外と怖いのは「印字端末への手入力」
データが揃っていない状態で2次元コード対応を進めると、現場では現実的な妥協が起きます。作業者が紙の指示書を見ながら、印字機の端末にロット番号と期限を打ち込むという運用です。
これは一見すると回っているように見えますが、リスクの性質が変わっています。従来のJANコードは版下に焼き込まれた固定情報なので、印字ミスという概念がほぼありませんでした。可変情報を扱い始めた瞬間に、打ち間違いが製品表示の誤りとして外に出ていくようになります。
| 打ち間違えたもの | 起きること | 気づくタイミング |
|---|---|---|
| 使用期限の年 | 実際より長い/短い期限が印字される | 店頭や検品まで気づかないことがある |
| 使用期限の日 | 数日ずれた期限 | 同上。表示違反になりうる |
| ロット番号 | 実在しないロット、または別ロットの番号 | 回収時に対象を特定できず、範囲が広がる |
| GTINの桁 | 別商品として認識される | POSで弾かれる。納品先で発覚 |
厄介なのは、印字されたコード自体は正常に読めるという点です。コードとしては有効なので、機械は疑いません。中身が間違っていることは、人が突き合わせるまで分かりません。可変情報を印字する運用に移るなら、その情報がどこから来るのかを先に決めておく必要があります。
移行の進め方
① 取引先の方針を確認
納品先の小売・卸がいつまでに何を求めるかを把握する
② 載せる情報を決める
GTINだけか、ロット・期限まで載せるか。ここで必要な準備量が決まる
③ データ側の整備
ロット採番・期限計算・印字への受け渡し。時間がかかるのはここ
④ 併記での試行
1次元と2次元を両方印字し、読み取り側の実機で検証する
⑤ 本運用
検証機での品質確認を運用に組み込む
印字品質の検証を忘れずに
2次元コードは誤り訂正機能を持ちますが、印字がかすれたり、コントラストが足りなかったりすれば読めません。とくに段ボールや軟包材への印字は条件が厳しくなります。検証機(ベリファイア)での品質確認を、導入時だけでなく日常の工程に組み込むことをおすすめします。
他の動きとの関係
| 動き | Sunrise 2027との関係 |
|---|---|
| DPP(デジタル製品パスポート) | EU側で製品情報へのアクセス手段が求められる。Digital Linkと考え方が近い |
| FSMA 204(米国食品の記録要求) | ロット単位の追跡が求められる。2次元コードで運びやすくなる(「FSMA204とは」) |
| 医療分野のUDI | 医療機器・医薬品ではGS1 DataMatrixの利用がすでに広がっている |
| EUバッテリー規則 | 製品にアクセス手段を求める点で発想が共通(「EU電池規制とバッテリーパスポート」) |
共通しているのは、「モノと情報をつなぐ入口を、現物に持たせる」という方向性です。Sunrise 2027は小売の文脈ですが、同じ流れが規制側からも来ている、という見方ができます。
ここで実務的に意味があるのは、これらを別々の対応案件として扱わなくてよいということです。求めている中身を並べると、重なりがはっきりします。
| Sunrise 2027 | FSMA 204 | DPP・EU電池規則 | |
|---|---|---|---|
| 動機 | 小売POSの効率化 | 食品の追跡と迅速な回収 | 製品情報の開示と循環利用 |
| 求める識別の粒度 | GTIN+ロット・期限 | ロット単位 | 製品・ロット・個体(対象による) |
| アクセス手段 | 2次元コード | 記録の提出 | 現物のコードから参照 |
| 必要になる社内データ | ロット・期限・使用実績 | 同左 | 同左+構成材料など |
最下行が同じ、という点が要点です。「どのロットを、いつ、どれだけ使ったか」という現場の記録は、どの制度でも土台になります。制度ごとに別々のシステムを検討するより、この土台を先に固めておくほうが、結果的に手戻りが少なくなります。
基幹システムの全面改修から始めなくてよい
「2次元コード対応にはERPやWMSの大改修が必要」と見積もられ、対応を先送りしている組織は少なくありません。ただ、最初に必要なのは全社的なデータ構造の刷新ではなく、いま紙やExcelにしかないロット・期限を、参照できるデータにすることです。必要な工程から段階的に手を付ける進め方については「コンポーザブルDXとは」もご参照ください。
よくある誤解
- 「2027年にJANコードが使えなくなる」:そうではありません。併存する想定であり、廃止の期限ではありません
- 「法律で決まっている」:Sunrise 2027は規制ではなく、業界の自主的な取り組みです。ただし取引条件として求められる可能性はあります
- 「QRコードなら何でもいい」:GS1の体系に沿った内容である必要があります。自社独自のURLを入れただけのQRでは、POS側で商品として解釈できません
- 「プリンタを入れ替えれば終わり」:ロット・期限といった可変情報を渡せる仕組みがないと、コードに載せるものがありません
- 「小売向けの話なので、うちは部品メーカーだから関係ない」:2次元コードによるロット管理という点では、産業用途のほうが先行しています。考え方は共通です
まとめ
- Sunrise 2027は、2027年末を目安に小売POSが2次元コードのGTINを扱えるようにする、GS1の国際的な取り組み
- 規制ではなく自主的な移行。1次元コードとの併存が前提で、廃止期限ではない
- 2次元コードはGTINに加えてロット・期限・シリアルを載せられる点が本質的な違い
- GS1 Digital Linkにより、1つのコードを業務用と消費者向けの両方に使える
- 準備で重いのは印字設備より、ロット・期限という可変情報を渡せるデータ側の整備
- 可変情報を印字端末に手入力する運用は、打ち間違いがそのまま表示の誤りとして外に出る
- Sunrise 2027・FSMA 204・DPPが必要とする社内データはほぼ同じ。制度ごとに別対応せず土台を先に固めるほうが早い
この分野を扱うなら ― QUALIKEEP でできること
正直にお伝えすると、QUALIKEEP は商品パッケージへの印字システムではなく、GS1のコード体系そのものを設計・発番する道具でもありません。POSや基幹システムの改修を担うものでもありません。QUALIKEEP が関われるのは、2次元コードに載せたい「ロットと期限」を、現場で確実に記録しておくという手前の部分です。
| 領域 | QUALIKEEP が担える範囲 | 対象外(他の仕組みで扱う領域) |
|---|---|---|
| ロット・期限の記録 | 受入・開封・使用・廃棄をQRスキャンで記録。期限切れや先入れ先出しの逸脱は警告(設定によりブロック) | —— |
| パッケージへの印字 | (該当なし) | 印字設備・ラベラー・版下の制作、印字品質の検証機(ベリファイア)は対象外 |
| 印字機へのデータ連携 | (該当なし) | 印字機へ印字内容を送る制御(インライン印字コントローラ)は行いません。連携が必要な場合は印字機メーカー・設備SIの領域です |
| GS1 Digital Link URLの生成 | (該当なし) | コード文字列の設計・生成はGS1の仕様と印字側の実装の領域 |
| GTINの発番・管理 | (該当なし) | GS1事業者コードの取得、商品マスタの設計はGS1および基幹システムの領域 |
| POS・基幹システム対応 | (該当なし) | レジ・WMS・ERPの改修は各システムの領域 |
| 現場での読み取り運用 | 現場のスマホでスキャンして記録を残す運用 | POSレジでの決済処理そのもの |
つまり、「印字したいロットと期限が、そもそも紙台帳にしかない」という状態を解消するための道具です。2次元コード対応を検討する前段として、現場のロット・期限がデータとして存在している状態をつくりたい場合の選択肢になります。
2次元コードに載せたいロットと期限、いまデータとして残っていますか。
飲食・食品の現場での使い方を見る →ご注意
本記事は公開情報をもとにした一般的な解説です。Sunrise 2027の対象範囲・時期・技術要件、および取引先が求める仕様は変わることがあります。実際の対応にあたっては、GS1 Japan の最新情報および納品先の要求事項を必ずご確認ください。
参考・出典
※ 外部サイトの内容・URL は変更される場合があります。最新の情報は各機関の公式ページをご確認ください。