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NO.088品質保証 / FMEA

FMEA・FTAとは?― 起きる前に潰す2つの手法と、その使い分け

FMEAは故障モードから影響を考えるボトムアップの手法、FTAは望ましくない事象から原因を辿るトップダウンの手法です。設計FMEAと工程FMEAの違い、RPNとAP(処置優先度)、そして「作ったきり更新されない」という最大の問題まで、図表を交えて整理します。

公開QUALIKEEP 編集部
品質保証FMEAFTAリスク評価設計

この記事の要点SUMMARY

  • FMEAは部品や工程の故障モードから出発して影響を考える手法、FTAは望ましくない事象から原因を辿る手法
  • 設計FMEAは製品の作り方を、工程FMEAは作る過程を対象にする。目的が違うので別々に作る
  • 最大の問題は「作ったきり更新されない」こと。変更があったときに見直されなければ意味を失う

不具合が起きてから対処するのではなく、起きる前に想定して潰しておく。この考え方を体系化したのが FMEAFTA です。自動車業界のIATF 16949では実質的に必須とされ、航空宇宙や医療機器でも使われます。この記事では、2つの手法の違いと、実務での使いどころを整理します。

2つの手法の向きが逆

まず、この2つは考える方向が逆です。ここを押さえると混乱しません。

**FMEA:下から上へ(ボトムアップ)**

「この部品がこう壊れたら、何が起きるか」を積み上げる

**FTA:上から下へ(トップダウン)**

「この事故が起きるとしたら、何が原因でありうるか」を辿る

下から積み上げるFMEA、上から辿るFTA
FMEA(故障モード影響解析)FTA(故障の木解析)
出発点部品・工程の故障モード望ましくない事象(頂上事象)
向きボトムアップ(原因→影響)トップダウン(結果→原因)
得意なこと漏れなく洗い出す特定の重大事象を深く掘る
苦手なこと複数要因の重なりを表現しにくいすべての事象を網羅するのは非現実的
表現表(一覧)論理記号を使った樹形図(AND/OR)
使う場面設計・工程の全体を点検する重大事故の分析、または特定リスクの深掘り

実務では、FMEAで全体を洗い出し、重大なものだけFTAで深掘りするという組み合わせがよく使われます。

FMEAの種類

種類対象問い
設計FMEA(DFMEA)製品の設計この設計だと、どんな不具合が起こりうるか材料の選定、構造、公差の設定
工程FMEA(PFMEA)作る過程この工程だと、どんな失敗が起こりうるか取り違え、条件外れ、組付け忘れ
その他設備、システムなど対象によって様々設備FMEA など

設計FMEAと工程FMEAは別物

混同されることがありますが、目的が違います。設計FMEAは「そもそもこの設計で大丈夫か」、工程FMEAは「設計どおりに作れるか」を見ます。設計が完璧でも工程で作り損なえば不良になり、工程が完璧でも設計が悪ければ不良になります。両方が要ります。

FMEAの組み立て方

工程FMEAを例に、表の列がどうつながっているかを見ます。左から右へ、因果でつながっているのがポイントです。

書くこと例(塗装工程)
工程・機能その工程が果たすべき役割規定の膜厚で塗装する
故障モードその機能が果たされない状態膜厚が薄い/厚い、塗りむら
影響故障モードが起きると何が困るか防錆性能の不足 → 顧客先で錆
厳しさ(S)影響の重大さ安全に関わるなら高い
原因なぜその故障モードが起きるか塗料の粘度変化、ガン距離のばらつき
発生頻度(O)その原因がどれくらい起きるか過去の実績から
現在の管理いま何で防いでいるか/見つけているか始業時の粘度測定、全数膜厚検査
検出度(D)流出前に見つけられるか見つけにくいほど高い
処置優先度上記から算出する優先度後述
対策と結果何をして、どう変わったか対策後に再評価

RPNとAP ― 優先度の付け方が変わってきた

長らく使われてきたのが RPN(Risk Priority Number) です。厳しさ・発生頻度・検出度をそれぞれ点数化し、掛け合わせた数値で優先順位を決めます。

ただしRPNには弱点が指摘されてきました。近年のAIAG-VDA版のFMEAでは、掛け算の値ではなく AP(Action Priority:処置優先度) という考え方が用いられます。

RPN(従来)AP(近年の方式)
算出S × O × D の積S・O・Dの組み合わせから表で判定
弱点同じ数値でも中身が違う(例:10×2×5と2×5×10)——
厳しさの扱い積に埋もれる厳しさが高いものを優先しやすい
しきい値「100以上は対策」など独自基準になりがちHigh/Medium/Lowで判断
注意しきい値を下回るよう点数を操作する動きが生まれやすい同様の注意は必要

RPNの一番の問題は「点数合わせ」

「RPNが100を超えたら対策が必要」というルールを置くと、対策したくない項目の点数を下げる、という力学が働きます。とくに検出度は主観が入りやすく、操作されやすい項目です。数値そのものより、なぜその点数にしたかの根拠が説明できるかが重要です。

「現在の管理」欄に何と書くか

FMEAの表でもっとも実態が表れるのが、「現在の管理」の欄です。ここに何が書かれているかで、その工程が本当に守られているかが見えます。

まず、管理には2種類あることを押さえてください。混ぜて書くと、点数の根拠が曖昧になります。

**予防の管理****検出の管理**
何をするかそもそも起こさない起きたものを見つける
影響する点数発生頻度(O)検出度(D)
違う材料が入らない構造、投入時の照合完成後の検査、抜取試験
強さ強い弱い(すでに不良が作られている)

FMEAの考え方では、予防が優先されます。検出を強化しても、不良を作ってしまったこと自体は変わらないからです。作ってから見つけるより、作らせないほうが上位、という単純な理屈です。

よくある書き方と、その問題

「現在の管理」欄の記載実質的な強さ審査で問われること
作業者による目視確認弱い見落とした場合はどうなるか。過去に見落としの実績はないか
ダブルチェック弱いなぜ一人目が見落とすのか。二人とも見落とす可能性は
作業標準書に明記弱い書いてあることと、守られていることは別
始業時の確認始業後に条件が変わった場合は
全数検査検査の見落とし率は。境界付近の判定は
間違った組み合わせでは進めない仕組み強い——
構造上、誤った取り付けができない最も強い——

上位3行が並んでいるFMEAは珍しくありません。問題は、それらを根拠に検出度を低く見積もっている場合です。「目視で確認しているから検出度は3」という評価は、見落としの実績がある工程では説明が苦しくなります。

点数を下げたいなら、管理を強くする

FMEAの運用で健全なのは、「点数が高いから管理を強くする → 結果として点数が下がる」という順序です。逆に「点数を下げたいから評価を甘くする」という順序になると、文書としての意味が失われます。再評価の欄には、何を変えたから点数が変わったのかが書けている必要があります。

FTAの読み方

FTAは樹形図で、論理記号を使って原因の関係を表します。基本は2つだけです。

記号意味読み方示すこと
ANDゲートすべてが起きたとき、上の事象が起きるAかつB多重の防護がある状態。片方が生きていれば防げる
ORゲートどれかが起きれば、上の事象が起きるAまたはB単独で事故につながる経路

実務での読み方はこうです。ORゲートが並んでいる箇所は弱点です。原因のどれか一つが起きただけで頂上事象に到達してしまいます。逆にANDゲートは防護が重なっていることを意味します。

頂上事象:期限切れ材料が製品に入る

防ぎたい事象

**ANDで守られている場合**

「現場が期限を見落とす」**かつ**「投入時の確認も抜ける」の両方が起きないと発生しない

**ORのままの場合**

「見落とす」**または**「そもそも期限が分からない」のどちらかで発生する

多重防護になっているか、単独経路が残っていないかを見る

最大の問題 ― 作ったきりになる

FMEAの実務でもっとも多い問題は、手法の理解ではありません。作った後、更新されないことです。

本来、見直すべきタイミング実際に起きていること
設計変更したとき設計は変わったが、FMEAは初版のまま
工程を変えたとき設備を入れ替えたのに、旧設備の前提で書かれている
材料・供給元を変えたとき変更が反映されず、想定していないリスクが入る
不具合が起きたとき「FMEAに載っていなかった」が繰り返される
類似製品を作るとき流用したが、違いを検討していない

3行目がとくに重要です。材料や供給元の変更は、FMEAの前提を静かに崩します。「この材料はこういう性質だから、この故障モードは起きにくい」という判断が、材料が変われば成り立たなくなるからです。

「生きている文書」にできるか

FMEAは審査で必ず見られる文書ですが、審査員が見ているのは体裁ではなく更新の履歴です。設計変更や工程変更があったのに改訂されていないFMEAは、「実際には使われていない」と判断されます。変更管理の手順の中に、FMEAの見直しを組み込んでおくのが実務的です。

よくある誤解

  • 「FMEAとFTAはどちらかでよい」:向きが逆なので、補い合う関係です。全体を洗い出すのがFMEA、深掘りがFTA
  • 「RPNが低ければ対策不要」:厳しさが高い項目は、頻度が低くても検討が必要です
  • 「一度作れば完成」:変更のたびに見直す文書です。更新されていないFMEAは形骸化しています
  • 「設計FMEAがあれば工程FMEAは不要」:見ている対象が違います。両方が要ります
  • 「点数は担当者が決めればよい」:主観が入りやすいので、複数の視点で決めるのが基本です

まとめ

  • FMEAは故障モードから影響を考えるボトムアップ、FTAは事象から原因を辿るトップダウン
  • 設計FMEAは製品設計を、工程FMEAは作る過程を対象にする。目的が違うので別々に作る
  • 優先度はRPN(S×O×D)からAP(処置優先度)へという流れがある。点数合わせに陥らないことが重要
  • 「現在の管理」欄では予防(発生頻度に効く)と検出(検出度に効く)を分けて書く。予防のほうが上位
  • FTAではORゲートが弱点、ANDゲートが多重防護を意味する
  • 最大の問題は更新されないこと。とくに材料・供給元の変更は前提を静かに崩す

この分野を扱うなら ― QUALIKEEP でできること

正直にお伝えすると、QUALIKEEP はFMEAやFTAを作成・管理するツールではありません。故障モードの登録、点数の算出、樹形図の作図——いずれも対象外です。QUALIKEEP が関われるのは、FMEAで「現在の管理」として書かれる欄のうち、材料まわりの管理という一部分だけです。

領域QUALIKEEP が担える範囲対象外(他の仕組みで扱う領域)
材料の取り違え・期限切れスキャン時の判定と警告します。工程FMEAの「現在の管理」に書ける実体——
使用実績の記録どのロットを使ったかの記録——
FMEA/FTAの作成・管理(該当なし)帳票の作成、改訂管理、点数やAPの算出は専用ツールや表計算の領域
リスクの評価(該当なし)厳しさ・発生頻度・検出度の判断は行いません
設計情報(該当なし)図面、仕様、構成の管理はPLMの領域
審査・認証の結果保証しませんIATF 16949やISOの審査に合格することを保証するものではありません。FMEAの妥当性は審査員が判断します

なお、FMEAで検出度を下げる(=見つけやすくする)よりも、発生頻度を下げる(そもそも起こしにくくする)ほうが強い対策とされます。材料の取り違えについて言えば、「後で検査で見つける」より「投入時に分かる」ほうが上位の対策にあたります。

工程FMEAの「現在の管理」欄、目視確認だけになっていませんか。

機械・電子部品の現場での使い方を見る →塗装・接着の現場での使い方を見る →

ご注意

本記事は一般的な解説です。FMEAの様式・評価基準・優先度の判定方法は、業界のマニュアルや顧客要求によって異なります。実際の運用は、適用される規格および取引先の指定に従ってください。

参考・出典

  1. 日本規格協会(JSA)
  2. 日本品質管理学会

※ 外部サイトの内容・URL は変更される場合があります。最新の情報は各機関の公式ページをご確認ください。

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