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NO.077法規制 / 記録管理

電子帳簿保存法と、製造現場の記録は何が違うのか?― 保存年限の考え方を整理する

2024年1月から電子取引データの電子保存が義務化されました。ただしこれは国税関係書類の話であり、製造記録や品質記録は対象外です。両者の要求がどう違うのか、真実性・可視性の確保とは何か、そして製造現場の記録の保存年限は結局どこから決まるのかを整理します。

公開QUALIKEEP 編集部
法規制記録管理電子帳簿保存法保存年限

この記事の要点SUMMARY

  • 電子帳簿保存法の対象は国税関係の帳簿書類。製造記録・品質記録はこの法律の対象ではない
  • 電子取引で受け取ったデータは、2024年1月から紙に出力しての保存では要件を満たさなくなった
  • 製造記録の保存年限は、業法・顧客要求・製品寿命から決まる。電帳法とは別の物差しで設計する必要がある

「電子帳簿保存法に対応したので、うちの記録の電子化は完了しました」——このような整理をしている組織が、実は少なくありません。しかしこれは大きな取り違えです。電子帳簿保存法が扱っているのは税務の書類であって、製造記録や品質記録は対象外だからです。この記事では、両者の違いを整理し、では製造現場の記録は何を基準に保存すればよいのかを考えます。

電子帳簿保存法が対象にしているもの

まず範囲を確認します。この法律が扱うのは国税関係の帳簿書類です。税務調査のときに提示することになる書類、と考えると分かりやすいでしょう。

区分対象扱い
電子帳簿等保存自社が電子的に作成した帳簿・決算書類一定の要件を満たせば電子のまま保存できる(任意)
スキャナ保存紙で受け取った請求書・領収書など要件を満たせばスキャンして電子保存し、紙を廃棄できる(任意)
電子取引電子的に授受した取引情報(メール添付のPDF請求書、Web上でダウンロードした領収書など)電子データのまま保存することが義務

3行目が重要です。最初の2つは「電子で保存してもよい」という緩和ですが、電子取引は「電子で保存しなければならない」という義務です。2024年1月から本格的に適用されています。

その書類を、どうやって受け取った/作った?

判断の出発点はここ

**メール添付・Webからダウンロード・EDI** → 電子取引

**電子データのまま保存する義務**。印刷して紙で保管では要件を満たさない

**紙で受け取った** → スキャナ保存(任意)

要件を満たせばスキャンして電子保存し、紙を廃棄できる。紙のまま保管してもよい

**自社でシステム作成** → 電子帳簿等保存(任意)

要件を満たせば電子のまま保存できる

どの区分に当たるかは「どうやって受け取ったか」で決まる

同じ「請求書」でも、郵送で届いたものと、メールにPDFで届いたものでは扱いが変わります。前者は紙のまま保管してよく、後者はデータで保存する必要があります。ここを混同すると、対応が中途半端になります。

「印刷して紙で保管」が使えなくなった

メールで届いた請求書PDFを印刷してファイルに綴じ、データは消す——という運用は、電子取引の要件を満たしません。データそのものを保存する必要があります。なお、保存ができないことに「相当の理由」があり、税務調査の際にデータのダウンロードの求めに応じられる場合には、要件が緩和される猶予措置があります。

求められる2つの性質

性質意味具体的な手段の例
真実性の確保改ざんされていないことタイムスタンプの付与、訂正削除の履歴が残るシステム、あるいは訂正削除の防止に関する事務処理規程の整備
可視性の確保必要なときに見られることディスプレイ・プリンタ等の備付け、システムの概要書類、検索できること

検索については、取引年月日・取引金額・取引先で探せることが基本とされ、事業者の規模等に応じた緩和もあります。

製造記録は対象ではない

ここが本題です。製造記録、検査記録、受入記録、作業日報——これらは国税関係書類ではありません。したがって電子帳簿保存法の対象外です。

では何も要求がないのかというと、そんなことはありません。別の物差しで、しばしばより厳しい要求がかかります

電子帳簿保存法製造記録・品質記録
根拠国税関係法令業法、規格、顧客要求、製造物責任
保存年限原則7年(欠損金がある場合など10年)製品や業界による。数十年に及ぶこともある
求める主体税務当局規制当局、認証機関、顧客
改ざん防止真実性の確保同様に求められる(ALCOA+等)
検索取引年月日・金額・取引先ロット番号、製造日、シリアル番号など
提示の場面税務調査監査、顧客査察、回収時の調査、訴訟

根拠も、年限も、検索の軸も違います。にもかかわらず「電帳法対応をしたから記録管理は済んだ」と整理してしまうと、製造記録の側は手つかずのまま残ります。

どちらも「記録の電子化」と呼ばれるが、重なっていない国税関係書類請求書領収書帳簿・決算書類根拠国税関係法令保存年限原則 7 年(欠損金があれば 10 年)検索の軸取引年月日・金額・取引先求める主体税務当局電帳法への対応で片づく(会計側の仕組み)製造記録・品質記録受入記録使用・作業の記録検査記録根拠業法・規格・顧客要求・製造物責任保存年限製品や業界による(数十年のことも)検索の軸ロット番号・製造日・シリアル求める主体規制当局・認証機関・顧客別に設計しないと、手つかずのまま残る片方をやっても、もう片方は終わらない。根拠も年限も検索の軸も違うので、別々に設計する。
図 同じ「記録の電子化」でも、要求している主体も年限も検索の軸も別。左を済ませても右は残る。

では製造記録の保存年限はどう決まるのか

ここが実務でいちばん悩ましいところです。一律に「◯年」と決められる法律がありません。複数の要求が重なっているため、それぞれを確認して、いちばん長いものに合わせるのが基本になります。

① 業法・規制の要求

医薬品・医療機器、食品、建築など。分野ごとに定めがある

② 規格・認証の要求

ISO 9001、IATF、FSSC等。製品ライフサイクル+◯年という形が多い

③ 顧客との取り決め

取引基本契約、品質保証協定。航空・自動車では長期になりがち

④ 製造物責任の観点

不具合が問われたとき、当時の製造状況を示せるか

→ いちばん長いものを採用

短いほうに合わせると、必要なときに出せない

複数の要求を並べ、いちばん長いものに合わせる

④はとくに見落とされます。製造物責任が問われる場面では、「当時、適切に製造していた」ことを示せるかどうかが争点になりえます。記録がなければ、その主張は難しくなります(「PL法とは」)。

分野保存年限の考え方の例
一般の製造業規格の要求(製品ライフサイクル+規定年数)と顧客要求のうち長いほう
自動車製品ライフサイクル基準。顧客要求で長期になることが多い
航空宇宙機体の運用期間に合わせて非常に長期になりうる(「JIS Q 9100とNadcap」)
医療機器製品の耐用期間を踏まえた年限。分野ごとの定めがある(「医療機器のUDI」)
食品賞味期限や流通期間を考慮した年限。制度上の要求も参照する

長期保存で実際に困ること

「10年保存」と決めるのは簡単ですが、10年後に実際に取り出せるかは別の問題です。

問題起きること
媒体の劣化紙は退色し、感熱紙は消える。CD-Rは読めなくなる
形式の陳腐化独自形式のファイルが、将来のソフトで開けない
システムの更新基幹システムを入れ替えたとき、旧システムのデータをどうするか
担当者の異動どこに何があるか知っている人がいなくなる
検索できない保存はされているが、ロット番号から探せない
改ざんの疑い長期間の保存中に変更されていないことをどう示すか

最後の2つは、ALCOA+でいう Available(利用可能性)Enduring(永続性) そのものです。保存しているだけでは足りず、取り出せて、変わっていないと言えることまで含めて設計する必要があります(「ALCOA+とは」)。

感熱紙の記録は要注意

計測器のプリンタや古い記録計で使われる感熱紙は、数年で印字が薄れて読めなくなることがあります。保存年限が長い記録を感熱紙で残している場合、コピーを取るか電子化するかの対応が必要です。「保管庫にあるが読めない」は、記録がないのと同じ扱いになりえます。

よくある誤解

  • 「電帳法対応=社内の記録の電子化」:対象は国税関係書類です。製造記録は含まれません
  • 「製造記録も7年でよい」:業法・規格・顧客要求で決まります。7年より長いことは珍しくありません
  • 「紙で保管しているから安全」:媒体の劣化があります。感熱紙は特に注意が必要です
  • 「保存していれば要求を満たす」:取り出せること、改ざんされていないことまで求められます
  • 「電子取引も印刷して保管すればよい」:2024年1月からデータでの保存が原則です(猶予措置の要件を満たす場合を除きます)

まとめ

  • 電子帳簿保存法の対象は国税関係の帳簿書類。製造記録・品質記録は対象外
  • 電子取引で授受したデータは、2024年1月から電子のまま保存することが原則
  • 同じ請求書でも、郵送で届いたものとメールで届いたもので扱いが変わる。判断は「どう受け取ったか」から
  • 要求されるのは真実性の確保と可視性の確保。検索できることも含まれる
  • 製造記録の保存年限は、業法・規格・顧客要求・製造物責任の観点から、いちばん長いものに合わせる
  • 長期保存では媒体の劣化・形式の陳腐化・検索性が問題になる。「保存した」と「取り出せる」は別

この分野を扱うなら ― QUALIKEEP でできること

最初にはっきりさせておきます。QUALIKEEP は電子帳簿保存法に対応するためのシステムではありません。請求書・領収書・契約書といった国税関係書類は扱わず、会計システムでもありません。電帳法への対応は、会計・経理側の仕組みで行ってください。

QUALIKEEP が関われるのは、記事の後半で扱った製造側の記録、それも原材料まわりに限られます。

領域QUALIKEEP が担える範囲対象外
原材料の受入・使用の記録ロット・期限・使用実績を記録し、日付やロットから検索できる——
改ざん検知記録は改ざん検知付きのPDFとして出力できる——
国税関係書類(該当なし)請求書・領収書・契約書・帳簿は扱いません。電帳法対応は会計システムの領域
タイムスタンプ(時刻認証)(該当なし)電帳法が想定する認定事業者のタイムスタンプ付与は行いません。記録に付くのはサーバー同期時刻であり、時刻認証業務の認定を受けたものではありません
製造記録全般原材料まわりのみ工程条件、検査結果、製造指図、図面の管理は対象外
保存年限の判断(該当なし)何年保存すべきかの判断は行いません。自社の要求に応じて設計してください
法的な効力の保証(該当なし)製造物責任をめぐる紛争や監査での結果を保証するものではありません。日常の記録を残しやすくする道具であり、法的な判断は専門家の領域です

「電帳法対応で経理は電子化したが、現場の受入台帳は紙のまま」——という状態はよく見かけます。両者は別の要求なので、別々に設計する必要があるという点だけ、この記事の結論としてお伝えしておきます。

経理は電子化したのに、現場の受入台帳は紙のままではありませんか。

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ご注意

本記事は公開情報をもとにした一般的な解説であり、税務上の助言ではありません。電子帳簿保存法の要件・猶予措置の適用条件は変更されることがあります。実際の対応にあたっては、国税庁の最新情報を参照し、税理士等の専門家にご相談ください。また記録の保存年限は、適用される業法・規格・顧客要求によって異なります。

参考・出典

  1. 国税庁「電子帳簿保存法関係」
  2. 国税庁「電子帳簿保存法一問一答」

※ 外部サイトの内容・URL は変更される場合があります。最新の情報は各機関の公式ページをご確認ください。

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