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NO.079法規制 / EU規制

EUサイバーレジリエンス法(CRA)とは?― 2026年9月から始まる報告義務と、2027年の本格適用

CRAは、デジタル要素を持つ製品にサイバーセキュリティ要求を課すEUの規則です。2026年9月11日から脆弱性・インシデントの報告義務が始まり、2027年12月11日に主要義務が全面適用されます。24時間・72時間・14日という報告の期限、SBOMの位置づけ、サポート期間の明示など、製造業に関わる部分を整理します。

公開QUALIKEEP 編集部
法規制EU規制CRAサイバーセキュリティSBOM製品安全

この記事の要点SUMMARY

  • CRAはデジタル要素を持つ製品が対象。ソフト単体だけでなく、通信機能を持つ産業機器や家電も含まれる
  • 2026年9月11日から脆弱性・重大インシデントの報告義務が先行して始まり、2027年12月11日に主要義務が全面適用される
  • 報告は24時間以内の早期警告し、72時間以内の通知、14日以内の最終報告という段階になっている

「サイバーセキュリティの法律」と聞くと、IT企業やソフトウェア会社の話に思えるかもしれません。しかし CRA(Cyber Resilience Act:サイバーレジリエンス法) の対象は、デジタル要素を持つ製品です。通信機能のある産業機器、制御基板の入った装置、アプリと連携する製品——これらを作ってEUへ出しているなら、製造業でも対象になります。この記事では、いつ何が始まり、何をすることになるのかを整理します。

何のための法律か

背景にあるのは単純な問題意識です。売った後に放置される製品が多すぎる、というものでした。

これまで起きていたことCRAが求めること
脆弱性が見つかっても修正されないサポート期間中は対処する
いつまでサポートされるか分からないサポート期間を明示する
初期パスワードが共通で変更もできない安全な初期設定にする
何が入っているか分からない構成を把握する(SBOM)
問題が起きても公表されない当局へ報告する
買う側が安全性を判断できない適合を示してCEマーキング

製品安全の考え方をサイバーセキュリティに持ち込んだ、と捉えると分かりやすくなります。機械に安全要求があるように、デジタル製品にもセキュリティ要求を課す——という構図です。

対象になる製品

「デジタル要素を持つ製品」という表現は広く、実際かなり広い範囲が入ります。

ソフトウェア単体

OS、アプリケーション、ライブラリ

ハードウェア+ソフトウェア

**産業用制御機器、計測器、ネットワーク機器、IoT家電、通信機能のある装置**

遠隔データ処理を伴うもの

製品の機能に必要なクラウド側の処理も含まれうる

対象外の例

医療機器・自動車・航空など、**別の法令で同等の要求がかかる分野**は調整される

「ソフトが入っていて、何かとつながる」なら、まず対象を疑う

判断に迷ったら「つながるか」から考える

完全にスタンドアロンで、ソフトウェアの更新手段もなく、外部と一切通信しない製品であれば対象外の可能性があります。逆に、保守用のUSBポートやネットワーク接続があるなら、対象かどうかを確認する価値があります。境界の判断は原文とガイダンスによります。

スケジュール ― 報告義務が先に来る

CRAで注意すべきは、全部が同じ日に始まるわけではないという点です。とくに報告義務が先行します。

時期何が始まるか実務への影響
2026年6月11日適合性評価機関に関する規定認証を担う機関側の整備が進む
2026年9月11日脆弱性・重大インシデントの報告義務製品を出している企業に、報告の体制が必要になる
2027年12月11日主要義務の全面適用セキュリティ要求への適合、CEマーキング、技術文書など

2行目が見落とされがちです。製品の設計要求より先に、報告の義務が始まります。「2027年まで時間がある」と考えていると、報告体制の準備が間に合いません。

報告の期限は段階になっている

**24時間以内:早期警告**

悪用が確認された脆弱性、または重大なインシデントを知ってから

**72時間以内:通知**

より詳しい情報、状況、講じた措置

**14日以内:最終報告**

脆弱性については、その後の対応を含めた最終的な報告

知ってから24時間。まず一報を入れる形

24時間という期限は、社内の意思決定としてはかなり短いものです。「担当者が気づいてから、上長に報告し、法務が確認し、経営が判断する」という通常のプロセスでは間に合いません。誰が判断し、誰が報告するかを事前に決めておく必要があります。

製造業のインシデント対応とは時間感覚が違う

品質不具合であれば、調査して原因を特定してから顧客へ報告する、という順序が一般的です。CRAの報告は「原因が分かってから」ではなく「知ってから24時間」です。情報が不完全でもまず報告する、という発想の切り替えが要ります。

求められる中身

領域求められること実務での準備
設計段階セキュリティを考慮した設計と開発リスク評価、設計レビューへの組み込み
初期設定安全な状態で出荷する初期パスワードの個体別化、不要な機能の無効化
脆弱性管理継続的に把握し、対処するSBOMの整備(「SBOMとは」)、監視の体制
更新の提供修正を届ける手段更新の仕組み、可能なら自動更新
サポート期間いつまで対応するかを明示製品ごとのサポート方針の決定
報告当局への報告窓口、判断者、手順の整備
技術文書適合を示す文書設計・評価の記録

サポート期間の明示が地味に重い

見落とされやすいのが、サポート期間を決めて公表するという要求です。産業機器は10年、20年と使われることがあり、「いつまで面倒を見るか」を明言してこなかった企業は少なくありません。

決めること悩ましい点
期間の長さ短くすると顧客が困り、長くすると自社の負担が続く
旧製品の扱いすでに売った製品にどこまで遡るか
部品・OSSの寿命使っている部品やライブラリのサポートが先に切れることがある
体制長期間、対応できる要員を維持できるか
費用保守契約に含めるか、別に取るか

3行目は根が深い問題です。自社製品のサポートを10年と宣言しても、内部で使っているOSやライブラリのサポートが5年で切れることがあります。そのとき何をするかまで含めて設計する必要があります。

脆弱性が出たとき、どこまで絞れるか

報告義務が始まると、実務では「知ってから24時間」で動くことになります。このとき最初に必要なのが、影響範囲の把握です。

ここでSBOMが効きます。ただしSBOMだけでは足りない場面があります。ソフトウェアの構成が分かっても、それがどの個体に入っているかは別の情報だからです。

脆弱性の公表

「ライブラリXのバージョン1.2以前に問題」

**SBOMで分かること**

自社のどのファームウェアにライブラリXが入っているか

**SBOMでは分からないこと**

**そのファームウェアが、どの出荷個体に書き込まれているか**

製造記録があれば

シリアル番号とファーム版・基板ロットの対応が分かり、対象を絞れる

ソフトの構成と、出荷した個体の対応。両方が要る
把握できていないもの起きること
どの個体にどのファーム版が入っているか出荷した全台を対象に告知することになる
どの個体にどの基板ロットが載っているかハード起因の問題で範囲を絞れない
出荷先該当ユーザーへ個別に連絡できない
出荷時期対象期間を特定できない

産業機器では、10年、20年と使われている個体について問い合わせが来ます。当時の構成が分かる記録が残っているか——これはサイバーセキュリティの話であると同時に、記録管理の話でもあります(「電子帳簿保存法と現場記録」)。

他の規制との関係

規制CRAとの関係
機械規則(2023/1230)機械の安全に関わるサイバーセキュリティを要求。CRAとは別の法律だが方向性は同じ(「EU機械規則とは」)
NIS2指令重要インフラ等の組織に対する要求。CRAは製品、NIS2は組織という違い
AI ActAIシステムへの要求。AIを含む製品では両方が関わりうる
医療機器・自動車の規制同等の要求がある分野は、重複を避ける形で調整される

整理すると、製品に対する要求(CRA)と、組織に対する要求(NIS2)は別です。自社が工場としてNIS2の対象になるかという話と、自社製品がCRAの対象になるかという話は、分けて考える必要があります(工場側の話は「工場のOTセキュリティ」)。

よくある誤解

  • 「ソフトウェア会社の話」:デジタル要素を持つ製品が対象です。通信機能のある産業機器も含まれます
  • 「2027年まで時間がある」:報告義務は2026年9月11日から先行して始まります
  • 「インシデントは調査してから報告」:知ってから24時間以内の早期警告が求められます
  • 「ソフトは外注だから関係ない」:製品としてEU市場に出す立場であれば、責任は自社にあります
  • 「日本国内向けの製品なら無関係」:その製品が組み込まれた設備がEUへ出るなら、要求は遡って降りてきます

まとめ

  • CRAはデジタル要素を持つ製品にサイバーセキュリティ要求を課すEUの規則
  • 2026年9月11日から脆弱性・重大インシデントの報告義務が先行して始まる
  • 2027年12月11日に主要義務が全面適用され、適合とCEマーキングが必要になる
  • 報告は24時間・72時間・14日という段階。原因究明を待たずに一報を入れる発想が要る
  • SBOMの整備とサポート期間の明示が実務上の負担になりやすい
  • SBOMだけでは「どの出荷個体に入っているか」は分からない。シリアルと構成の対応がないと全台対象になりうる

この記事とQUALIKEEPの関係について

率直にお伝えします。CRAへの適合に関して、QUALIKEEP にできることはありません。製品のセキュリティ設計、脆弱性の管理、SBOMの生成、更新の配信、当局への報告——いずれも対象外です。QUALIKEEP は原材料・副資材の受入・期限・ロットを記録するサービスであり、製品のサイバーセキュリティには関与しません。

この規制への対応は、開発部門・品質保証部門・専門のベンダーの領域です。

領域扱えるか補足
SBOMの生成・管理できませんソフトウェア構成の解析、脆弱性データベースとの照合は対象外です
脆弱性の監視・報告できません当局への24時間報告を含め、報告の自動化や管理機能はありません
セキュリティ機能ありません攻撃の検知・防御、更新の配信を行う製品ではありません
CRA適合・CEマーキング保証しません適合の判定、認証機関への申請を代行・保証するものではありません
部材ロットの記録扱えます基板や部品の受入・使用の記録という、物理側の一部分に限られます

本記事は、制度そのものを理解していただくために書いています。

ご注意

本記事は公開情報をもとにした一般的な解説です。適用日・対象範囲・報告の手順は変更されることがあります。実際の対応にあたっては、規則の原文、欧州委員会のガイダンス、およびセキュリティの専門家にご確認ください。本記事は適合を保証するものではありません。

参考・出典

  1. 欧州委員会「Cyber Resilience Act」
  2. 欧州委員会「Cyber Resilience Act - Implementation」
  3. IPA(情報処理推進機構)

※ 外部サイトの内容・URL は変更される場合があります。最新の情報は各機関の公式ページをご確認ください。

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